ブックタイトル臨床神経内科学 改訂6版

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概要

臨床神経内科学 改訂6版

角の拡大と側頭葉萎縮による脳溝開大がみられる程度であるが,進行につれて海馬を含む側頭葉内側部から大脳皮質までが広範に萎縮する(図Ⅳ-7-3).しかし,脳血流SPECT やPETのような機能画像では,形態学的萎縮に著変が認められない早期から頭頂葉と側頭葉内側部,および帯状回後部に血流低下が認められるので,早期診断に有用である(図Ⅳ-7-4).進行につれて萎縮は全脳に及んで側脳室拡大と脳溝開大が進み,脳血流低下部位は拡大し,一次運動野と感覚野,後頭葉以外の大脳皮質で広範に低下する.f.新しいバイオマーカーと早期診断 近年,髄液中のtau 蛋白濃度上昇,Aβ42 濃度の減少が診断マーカーとして注目されている.さらに,アミロイドPET によって脳内アミロイド沈着が描出されるようになり,Alzheimer病の早期診断に有用であることが確立された.近年,タウPET も開発され脳内tau蛋白を描出することが可能となり,臨床研究が進行中である.g.治 療 進行を止め症状を回復させる根本的治療法はない.脳内アセチルコリンを増加させることを通じて症状の進行を一定程度遅らせる効果がある対症的薬物治療として,3 種類のコリンエステラーゼ阻害薬(donepezil,galantamine,rivastigmine)と,グルタミン酸NMDA 受容体拮抗薬のmemantine が使用可能である.さまざまな認知行動療法[音楽療法,遊戯療法,作業療法,ナラティブテラピー(患者の回想を語らせる療法)など]は,精神活動賦活に一定の有効性が示されている.興奮・不穏や行動心理学的症状(BPSD)に対しては,個々の患者の生活史と症状に配慮した適切なケアが最も有効である.対応困難なBPSD に対しては,非定型・定型の抗精神病薬が抑制効果を示すが,精神活動抑制,parkinsonism 誘発,寝たきりの原因となるので,短期少量投与を原則とする.晩期の無動無言期には,寝たきり状態に準じた栄養管理と合併症の予防が重要である.2 前頭側頭型認知症とPick 病frontotemporal dementia(FTD)and Pickdisease【概説】 人口10 万人当たり2~10 人の有病率であるが,65 歳未満の初老期発症認知症(わが国の若年性認知症)において頻度が高い.遺伝子変異が判明しているのは一部であり,大部分は原因不明である. 歴史的には,Pick 病を起源とする疾患概念である.従来のPick 病の診断と病型分類は臨7 大脳変性疾患?397図Ⅳ-7-3  進行期Alzheimer 型認知症のCT対称性の脳萎縮と脳質拡大が目立つ.図Ⅳ-7-4  進行期Alzheimer 病患者のMRI 前額断FLAIR 像64 歳女性.高度の萎縮が両側海馬と大脳皮質に認められ,白質の萎縮と変性,脳室拡大が顕著である.