ブックタイトルフォーカス!最後の心房細動診療

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概要

フォーカス!最後の心房細動診療

110 高齢・超高齢者では,心房細動によるQOL 低下が明らかでない場合がむしろ多いでしょう.Livelihood に現時点の問題がないと判断すれば,Life とBrain に対する対策と管理で終了しておくというのが,ひとつの無難な考えかただと思っています.ただし,そのような場合でも,私は一度,心拍数調節について「心を配る」ようにしています.しかし,この心配りが実に悩ましいところです. なぜ,動悸などのQOL 低下がない場合でも,心拍数調節に心を配るのか.それは,将来QOL 低下を引き起こす可能性の高い心不全を予防するためです.なにしろ心不全は,その発症率,死因における割合ともに,脳卒中の約2 倍という大きな存在です.脳卒中予防に配慮して,心不全予防には心を配らないわけにはいかないでしょう.しかし,高齢・超高齢の心房細動患者における心不全予防に関するエビデンスはほぼ皆無です.左室駆出率(LVEF)の保たれた拡張不全(HFpEF)では,確固とした薬物ツールさえありません.だからこそ,唯一介入できそうな心拍数調節に注意が向いてしまうのでしょう.将来の心不全発症リスクを考えれば,QOL 低下がなくても,心拍数に注意を振り向けないわけにはいかない. そして,自分の過去を振り返れば,心不全予防のためよかれと思って行った心拍数調節が,後になり,かえって心不全を招いてしまう原因になったという苦い経験を思い出します.それは決まって,高齢・超高齢者の永続性心房細動でした.今でこそ,RACE Ⅱ試験以降,緩やかな心拍数調節が望まれる時代に心拍数調節は何のため? 目標は? 何を使う?