ブックタイトル多職種カンファレンスで考える心不全緩和ケア

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概要

多職種カンファレンスで考える心不全緩和ケア

2 「緩和ケア」という言葉が一般的なものになって久しい.緩和ケアは,がんに罹患した患者を,痛みや吐き気といった身体症状を軽減するとともに,精神面での変調,社会的経済的問題を多面的にサポートする医療として認識されている.緩和ケアは今やがん治療において主軸の一つをなす医療である. では,心不全における「緩和ケア」とは何だろうか? 心不全における緩和ケア,と聞いてもピンとこない医療従事者も多いのではなかろうか.呼吸困難で搬送されても,利尿薬治療などで改善し,数日の入院で苦しかったことを忘れるくらいに元気になる患者も多い.心不全による苦痛を緩和するのは心不全治療であって,緩和ケアではないという固定観念があるためである.しかし,治療抵抗性の末期心不全では,体動時の呼吸困難や全身困難感などの身体的苦痛はがんと同様に甚大である.また,長期にわたる療養期間,繰り返す入退院,身体活動度の低下も相まって,精神的にも社会的にも追い込まれている患者も多い.確かに,心不全治療そのもので解決できる問題もあるが,末期心不全では心不全治療と並行してアプローチしないと解決できない問題の方が多いように感じる. 欧米のガイドラインでは,「心不全末期には患者のQOLを重視した医療を行うとともに,患者や家族に予後を適切に伝え,希望する終末を達成できるように多職種からなるチームで診療にあたるべき」とされている1).患者の抱える苦痛は多面的であり,多職種がそれぞれの専門性を活かし,協働して取り組むチーム医療が今後ますます重要になってくる.心不全緩和ケアの特徴 がんの緩和ケアと心不全の緩和ケアは,本質的には何の違いもない.WHOは2002 年に,緩和ケアを「生命を脅かす疾患に関連している問題に直面する患者と家族に対し,身体的,心理社会的,スピリチュアルな問題を早期から正確に評価し解決することにより,苦痛を予防し緩和することにより,患者と家族のQOLを改善する取り組みである.」と定義しており,緩和ケアをがん治療に限定していない.「生命を脅かす疾患」という意味では,がんも心不全も同様である. しかし,がんと心不全には悪性疾患と慢性疾患という大きな違いがあり,病態の進行過程や症状の出現経過(病みの軌跡)が異なる.したがって,心不全緩和ケアではがん緩和ケアとは異なった対応が必要なことが多い.まず,終末期を迎える経過に違いがある.末期から終末期に至る経過は,がんの場合,比較的QOLが保たれた状態で経過し,死の1 ~2 ヵ月前から急速に体調やADLが低下する.一方,心不全では,増悪寛解を繰り返しながら数年かけて身体機1 心不全緩和ケアとチーム医療1 心不全緩和ケアとチーム医療