ブックタイトル多職種カンファレンスで考える心不全緩和ケア

ページ
11/16

このページは 多職種カンファレンスで考える心不全緩和ケア の電子ブックに掲載されている11ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

多職種カンファレンスで考える心不全緩和ケア

452 食欲不振・消化器症状消化器症状とその対応 心不全患者の腸管機能には注意が必要である.心拍出量の低下により,脳や他の重要臓器の血流量を保つために,腸管への血流量は一時的に減少してしまう.血流量が減少すると,消化,吸収,免疫機能といった腸管の機能も低下してしまう. そこで,消化・吸収過程(摂取から排泄まで)における次の5つの段階において,栄養障害の原因となる何らかのトラブルが生じていないかを確認することが,心不全患者においては特に重要であると考える.1:摂取 嗜好や抑うつ症状,嚥下障害,味覚異常など2:消化 消化管機能の障害(腸管のうっ血・浮腫・虚血など)3:吸収 絨毛の萎縮や腸内細菌叢の変化(バクテリアル・トランスロケーションなど)4:同化 強い炎症やストレス,インスリン抵抗性,末梢循環不全など5:排泄 消化管狭窄や腸管蠕動運動の低下など これら5つの段階に何らかのトラブルが生じていれば,栄養障害を伴うリスクも高いことが容易に推察される.したがって,食事内容や栄養補助食品の調整,経管栄養や静脈栄養の検討,薬剤調整など,最適な栄養療法についてただちに検討する必要がある.心臓移植待機(VAD装着)患者の栄養管理 心臓移植待機患者は,VAD 装着前の意志決定支援やVAD 装着後の創部(ドライブライン)の疼痛,抑うつといった精神症状の出現などに対して,緩和ケアの介入が必要となる患者も少なくない. VAD 装着術前の栄養状態は,術後の回復に大きく影響を及ぼすため十分に留意する必要がある.患者の栄養指標〔血清総タンパク,血清アルブミン,コリンエステラーゼ,総コレステロール・中性脂肪,rapid turnover protein(RTP),末梢血総リンパ球数,窒素バランスなど〕を経時的に評価し,低栄養状態に陥ることのないよう,食事内容や投与栄養量などの調整を行う必要がある. 例えば,栄養状態が低下傾向で,経口摂取のみでは必要栄養量を充足させることが困難な患者がいた場合,一時的に経管栄養の併用を勧めるケースがある.経管栄養剤には半消化態栄養剤,消化態栄養剤,成分栄養剤があるが(表1-6),このような患者は,下痢や嘔吐といった消化