ブックタイトル多職種カンファレンスで考える心不全緩和ケア

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概要

多職種カンファレンスで考える心不全緩和ケア

44食欲不振とその対応 心不全とは,心臓がポンプとしての役割を十分に果たせず,全身の臓器に必要量の血液を送れなくなっている状態をいう.これにより,全身のあらゆる部分に障害が生じ,もろもろの症状が現れることになる. 心不全症状には,心臓から全身に十分な血液を送り出せないことによって生じる症状と,全身から心臓に戻ってくる血液が停滞することによって生じる症状とがある.特に,右心不全の状態は後者であり,血液の停滞によって体のあらゆる部分に水分がたまり,むくみが生じる.肝臓や消化管のむくみ,胸水・腹水などが食欲不振や吐き気の原因となり,食事が食べられない状態となって栄養不良に陥ってしまう患者も少なくない.さらに,呼吸困難感や倦怠感,病状や予後に対する不安や抑うつといった症状も食欲不振の原因となるであろう. 食欲不振症状を認める患者へのアプローチでは,本章の「5 管理栄養士の役割(→ p.29)」でも一部述べたが,まずは経口摂取を可能な限り保持・増進させるための工夫を行う必要がある.患者の症状や嗜好を把握し,食事内容・食事形態の調整や栄養補助食品の使用などについて検討する.心不全終末期の状態であれば,患者の苦痛になるような経管栄養や静脈栄養を無理に使用する必要はないであろう.あくまで「食べる楽しみ」といったQOLの保持に努める介入が重要となる.一方で,積極的な栄養管理が重要な時期と判断される場合には,経口摂取が不十分な状態であれば,病状の改善が見込まれるまでの一時的な期間でも,経管栄養や静脈栄養の使用を検討する必要があると考える.その場合には,病態に応じた経管栄養剤や輸液内容を検討し,その患者の必要栄養量に見合った投与量や投与速度などを考えなければならない.2 食欲不振・消化器症状3 心不全で出現する諸問題への対応● 呼吸困難感や倦怠感などといった心不全症状からくる食欲不振.● 病状や予後に対する不安や抑うつからくる食欲不振.● 腸管浮腫や虚血などによる消化管機能(消化,吸収,免疫機能)の低下.循環器疾患患者が訴える食欲不振・消化器症状の例