ブックタイトル循環器診療のロジック

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概要

循環器診療のロジック

総論ⅠⅡ心不全本症例のショックは以下のいずれと考えられるか?1.循環血漿量減少性ショック2.血液分布異常性ショック3.心原性ショック4.心外閉塞・拘束性ショック 一般に,ショックは図9 - 1のように4つに分類されるが,実際には一人の患者が複数のショック型を呈することが少なくない. 本症例においては,外傷や吐下血などの大量出血を示唆する所見はなく,明らかな循環血漿量の減少を示唆する所見は認めなかった.血流分布異常性ショックには,敗血症性ショック,アナフィラキシーショックなどがある.アナフィラキシーショックは患者にとって既知のアレルゲンがあるか,あるいはアレルゲンと疑われる物質への曝露があり,急性発症で皮膚(もしくは粘膜)症状,呼吸器症状(気道狭窄の症状),腸管症状のいずれかを伴う.本症例ではアレルゲンと疑われる物質への曝露は不明だが,皮膚,呼吸器,腸管症状を伴っていなかったことから,アナフィラキシーショックは否定的と考えられた.発熱はなく,感染を示唆するような身体所見も認めなかったことから敗血症性ショックも否定的と考えられたが,末梢冷感を認めなかった点からは血液分布異常性ショックの要素が存在する可能性を残しておくべきと考えられた. したがってこの時点では,心原性ショック,心外閉塞・拘束性ショックを念頭に,血液分布異常性ショックの可能性も考え,検査を進めた.Answer 2  2,3,4 図9 - 2に,心電図,胸部X 線撮影,心エコー検査の結果を示す.Question 2心室不全(D)心外閉塞・拘束性ショック(心タンポナーデ,急性肺血栓塞栓症など)(C)心原性ショック血漿量または血液量の減少(A)循環血漿量減少性ショック(出血性ショックなど)心膜タンポナーデ閉塞血管拡張(B)血液分布異常性ショック(アナフィラキシーショック,敗血症性ショックなど)図9 - 1 ショックの分類[Vincent JL and De Backer D:N Engl J Med, 369:1726-1734, 2013を一部改変]9. 脚気心 57