ブックタイトルエキスパートが現場で明かす 心不全診療の極意

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概要

エキスパートが現場で明かす 心不全診療の極意

193.高用量フロセミドを服用している慢性心不全患者のfluid control,次の一手は?フロセミドのバイオアベイラビリティが低い(だいたい50%前後であり,かつ患者によって非常にばらつく)ことによるところが大きい.実際,いくつかの研究でフロセミドに対するトラセミドの有効性を示した論文がある1, 2).したがって,フロセミドをある一定量(個人的な見解としては60~ 80 mg)服用していても,うっ血が残存しており,利尿薬の増量が必要と判断した場合,服用中のフロセミドと同等量+αの量のトラセミドに変更してみるというのは,ひとつの理にかなったオプションではないかと思う.? もうひとつの長時間作用型の経口ループ利尿薬としては,アゾセミドがある.フロセミドに換算すると,フロセミド20 mg =アゾセミド30 mg に相当するといわれている.わが国で行われたJ-MELODIC 研究では,慢性心不全患者のループ利尿薬をアゾセミドに切り替えた群は,そのままフロセミドで治療し続けた群と比較して,心血管死亡および心不全による予定外受診を有意に減らした.ただし,2 年後のBNP 値などには,とくに2 群で有意差がなかったため,利尿薬抵抗性を打開する手段としてのアゾセミド投与の意義はいまだ不明である.B サイアザイド系利尿薬を併用する場合とは?? ループ利尿薬に抵抗性を示す患者の一部は,尿細管におけるナトリウムの再吸収が増加していることが問題となっている場合がある.この尿細管におけるナトリウムの再吸収は,さまざまな場所で,さまざまなことが原因で起こる.問題なのは,その大きな原因のひとつが,心不全の主病態である神経体液性因子の活性化によることである.このことは,「利尿薬抵抗性の患者には,さらにループ利尿薬を追加することが多い」こととあわさって悪循環を形成する.ループ利尿薬とサイアザイド系利尿薬の薬理作用の違い? ループ利尿薬に抵抗性を示す患者への選択肢のひとつとして,尿細管におけるナトリウムの再吸収を抑えることを考えるのだが,その方法のひとつにサイアザイド系利尿薬の併用がある.ループ利尿薬はヘンレ上行脚に作用してナトリウム再吸収を阻害するのに対して,サイアザイド系利尿薬は遠位尿細管のナトリウム-塩素共輸送系を阻害してナトリウム再吸収を低下させる.一般的に,遠位尿細管では,ヘンレループを通り抜けてきたナトリウムのうち75 ~ 80%が再吸収されるといわれている.ループ利尿薬を使用すると,結果的にはヘンレループを通り抜けて遠位尿細管に流れていくナトリウムが増加し,そのことが遠位尿細管のナトリウム-塩素共輸送系を活性化させてナトリウムの再吸収が増加する.したがって,理論上はサイアザイド系利尿薬を追加することは理にかなっていると思われる.実際,高用量のフロセミドを服用している患者にサイアザイド系利尿薬を追加したところ,尿量の増加が観察されたという報告もある3).ARB とサイアザイド系利尿薬との合剤の活用? 筆者は,通常,実際の処方として,サイアザイド系利尿薬のヒドロクロロチアジド12.5 mgを追加することから始めていた.この量は,現在,高血圧に対して適応があるアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)との合剤に含有されているヒドロクロロチアジドの量である(6.25 mg のヒドロクロロチアジドとARB の合剤もある).ちなみにすでにARB を服用している患者であれば,量さえ合えば,このARB+ヒドロクロロチアジドの合剤に切り替