ブックタイトルエキスパートが現場で明かす 心不全診療の極意

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エキスパートが現場で明かす 心不全診療の極意

18Ⅰ.慢性心不全における基本治療はじめに? 本章で想定しているのは,「外来通院中の慢性心不全患者で,現在,ループ利尿薬のフロセミドを60 ~ 80 mg 服用しているが,下腿浮腫や胸水貯留が残存しており,呼吸苦も労作時には感じることがある.できればもう少しfluid control(体液貯留のコントロール)をして,心不全症状が改善することを目指したいが,すでにフロセミドは,それなりの量を服用しており,これ以上増量しても効果が期待できるかは不明」という場面である.外来で,心不全診療を行っている臨床医なら,少なくとも一度は(おそらくもっと),このような状況を経験されていると思う.? これがたとえば,NYHA(New York Heart Association)心機能分類Ⅳ度の症状で来院した患者であれば,入院して治療介入ということでよいのだろうが,NYHAⅡ度(Ⅲのうち,Ⅱ寄りのⅢなど)の患者では,「可能であれば外来での薬物治療で調整してどうにかコントロールできないか」と考えるのではないだろうか.? 筆者としては,ここで選択肢として,以下3つがあげられると思う(フロセミドの増量は効果が期待できないとして,あえて選択肢からはずす). ①同じループ利尿薬でも作用機序の違うループ利尿薬を併用 ②サイアザイド系利尿薬を併用 ③V2受容体拮抗薬を併用である.個人的な大まかな優先順位としては,②> ③> ① だろうか.ただ,筆者の経験からそれぞれの治療を選択するときに考えることを以下に述べる.A 同じループ利尿薬でも作用機序の違うループ利尿薬を併用する場合とは?? ここで現実的に選択するフロセミド以外のループ利尿薬というと,トラセミドもしくはブメタニドということになると思われる.筆者はブメタニドの使用経験がないので,ここではトラセミドについて述べる.? よく知られているとおり,トラセミドは長時間作用型のループ利尿薬で,一般的にはフロセミド20 mg =トラセミド4 mg に相当するといわれている.フロセミドと比較したときのトラセミドの有利な点としては,そのバイオアベイラビリティ(生体内での利用能)にあるといわれている.これは,トラセミドのバイオアベイラビリティが高いというよりは,高用量フロセミドを服用している慢性心不全患者のfluid control,次の一手は?M3