ブックタイトル心不全診療について本気出して考えてみた

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概要

心不全診療について本気出して考えてみた

453血管トーヌスをアレンジする 3血管トーヌスをアレンジするcentral volume shift とは… central volume shift とは,血管内に存在する血液が,末梢血管から,より中心の体血管に移動することを意味する用語です.急性心不全患者によくみられる現象で,心不全の悪化因子であるとされています.しかし,心不全であるにもかかわらず,なぜこのようなうっ血を悪化させるメカニズムを持続しているのか,不思議に思っていました. 心不全では,心拍出量の低下により,全身臓器を灌流する有効な循環血漿量が低下します.生体は,重要な臓器への灌流を維持するため,生命維持に必要度が低いとされる末梢臓器の血管を収縮させて,重要な脳や腎臓の血流を保とうとします. きっと,この生体の反応は正しい判断となっている時もあれば,誤った判断になっている時もあるだろうと思います.いずれにせよ,末梢血管が収縮すれば,結果的に血液は中枢に近い体血管に貯留せざるを得ず,心内圧は上昇します.これがcentral volume shift のメカニズムであり,いわゆるクリニカルシナリオ1(p.20)の急性心不全をかたちづくります.生体にとって,急性心不全が持続しようがしまいが,とにかく脳や腎臓の血流を維持したいのでしょう. 調べてみると,このメカニズムは安定した慢性心不全でも働いています.たとえば,安定した心不全患者と健常人が水中運動をした場合,両者ともに酸素