ブックタイトル心不全診療について本気出して考えてみた

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概要

心不全診療について本気出して考えてみた

191心機能をコンディショニングする心機能に対する介入の考えかた 想像しにくいですが,「家計に苦労する貧乏な一家,それを支える病気がちのお父さん」を想像してみてください. お母さんと子供がお腹を空かせて,明日の食べ物もないという状況なら,たとえ病気がちといえどもお父さんは体に鞭打って働き,家族にご飯を食べさせる必要があるでしょう.このとき,お父さんの将来が心配になりますが,家族のことを考えるとそう言っていられません. そうこうするうちに,毎日家族のご飯が用意できるような状態になったら,今度は逆に家族が質素倹約して,お父さんを休ませ体力回復を目指す必要があります.毎日ご飯が食べられるからと家族が贅沢な食事をしていたら,お父さんは働きづめ….家族が気づかぬうちに持病が悪化し,やがて働けなくなり,また元の木阿弥ということになりかねません.逆に,お父さんをしっかり休ませることができたら,やがて体力もつき,もっと稼ぎがよくなり,ますます家計が楽になることでしょう. この奇妙な話は,筆者の心機能介入に対する考えかたを表すために作ったストーリーです.心機能に対する介入を考える上で,「心臓」と「全身臓器の灌流」という異なる2 つの要素を同時に考慮する必要があります.お父さんが心臓,家族が全身臓器の灌流です.クリニカルシナリオあるいはNohria-Stevenson 分類は,この両者の関係から決定される治療法の選択です.一方で,このような分類がよく知られるようになると,この図式に従って,あまり考えないで治療するという態度が蔓延しがちです.そうでなく,その底流に何らかの思想が感じられれば,なおよいと思います.