ブックタイトルてんかんの手術の正しい理解

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てんかんの手術の正しい理解

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てんかんの手術の正しい理解

第8 章 手術して心配なことは何か893 手術に伴う機能障害 てんかん原性域は正常な組織ではなく,機能的には低下しているので,切除しても機能障害は起こりにくい.また,正常な領域でも機能障害が必ず起こるとは限らない.脳には一般に失われた機能を修復しようとする適応能力(可塑性)が備わっており,失われた機能は,損傷された領域の周辺や,特に対側の対称部位によって代償され,機能の障害が起こっても一過性で後にほとんど残らないことも多い. 大脳皮質には電気刺激で反応が容易に得られる部位(能弁な領域)と,反応が得られにくい部位(沈黙野)があった(第3章2参照).このような違いは手術に伴う機能障害の場合にも,ある程度は当てはめることができる.すなわち,能弁な領域(運動野,補足運動野,体性感覚野,視覚野,聴覚野,優位側の言語野,および側頭葉の内側底部)を切除すると,それらの固有の機能が何らか障害される.基本的にはそうであるが,補足運動野,運動野の一部,および聴覚野では,著明な改善が得られる.この場合の機序としては,同側支配が考えられる.脳梗塞では一般には対側の手足が麻痺するが,これは損傷された領域が対側の身体部位に対して優位に働いていたことによる.しかし,補足運動野などでは,両側の身体部位とほぼ同じ程度のつながりを持っているので,対側支配が遮断されても,同側性の線維連絡によって十分にその機能を遂行することができる. 一方の沈黙野は,そのほとんどが高次の機能を担っている連合野であるが,切除しても目立った変化はみられないことが多い.連合野は発生学的に新しく,生後も10 歳頃までは成長し続けるので,脳の可塑性が特に強く働くことによる.また連合野は,多くの領域とネットワークによって結ばれて機能しているので,その一部が切除されても決定的な影響は起こりにくいと考えられる. この項では手術に伴う機能障害について,皮質切除術などによる場合は,中心溝周囲領域,前頭前部領域,後部皮質領域,および側頭領域に分け,大脳半球切除術と脳梁離断術による場合も加えて,述べる