ブックタイトルてんかんの手術の正しい理解

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てんかんの手術の正しい理解

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てんかんの手術の正しい理解

60ん原性域(一次焦点)からの発作発射が遠く離れた部位に頻回に投射されると,その投射を受けた別の部位に新たなてんかん原性が形成されて(二次焦点),そこからも臨床発作が独立して起こるようになるというものである.この現象をヒトで直接的に証明することは難しい.しかし,手術成績を多数例について調べてみると,発作の初発から手術までの期間(罹病期間)が30 年以上といった長い症例では,10 年程度の短い症例に比べて,発作消失率がわずかではあるが低いことから,似たような現象はヒトでも起こるのではないかと考えられている. 以上のような弊害は,発作のある状態が持続している場合であるが,発作による身体への一時的な,しかし直接的な影響も無視できない.発作で転倒すると,頭部外傷や手足を骨折することがある.意識が消失する発作では転落事故,火傷,入浴時の溺死などを心配しなければならない.発作が頻発していれば,栄養失調や肺炎などになりやすく,けいれん発作が30 分以上も続く重積状態では命が危ぶまれることもある.まれには突然死もみられる.突然死とは,発作による溺死や発作重積による死亡ではなく,剖検でも死因を特定できないものであり,てんかん患者の死因の20%近くを占める.全身けいれんが多く,長期の多剤併用療法がなされている症例に起こりやすい.2 薬物治療の限界 手術で発作が根治し,機能障害もまったく起こらなければ,薬物治療の問題を引き合いに出す必要はない.しかし,てんかんの外科治療は,迷走神経刺激療法を除くと脳の手術であり,脳の一部の切除あるいは切離が行われる.手術ではまれには予期せぬ合併症も起こるので,なんらかの機能障害や合併症の危険性を考えると,外科治療の対象は基本的にはやはり薬物治療では発作を抑制できない症例ということになる. 薬物治療では,発作型あるいは症候群から考えて最も適していると思われる薬の単剤投与から始めて,効果がなければ別の薬に変更する.