ブックタイトル症例から学ぶ 戦略的てんかん診断・治療

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症例から学ぶ 戦略的てんかん診断・治療

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概要

症例から学ぶ 戦略的てんかん診断・治療

初診時現病歴13歳時,兄弟げんかで興奮した後に四肢を硬くして倒れ,意識消失①した.激しい呼吸が認められた.その後も意識を消失することが時々あり,尿失禁を伴うことがあった②.他院を受診し,頭部MRI,脳波検査を施行されたが,異常は認められなかった③.臨床症状からてんかんと診断され,抗てんかん薬内服療法開始となった.しかしながら,その後も,主として早朝に意識消失を認め,意識消失時にけいれんが目撃されることもあった.また,学校のテスト中に椅子ごと倒れたこともあった.発作がコントロールされないために17歳時に当院に紹介された.紹介時にはバルプロ酸400 mg/日とカルバマゼピン400 mg/日④を処方されていた.紹介時診断部分てんかん(局在不明)既往歴特記事項なし家族歴いとこが熱性けいれん診察所見・一般理学所見:身長:156 cm,体重:45.3 kg,BMI:18.6その他特記事項なし.・神経学的所見:高次脳機能,脳神経系,腱反射,運動系など特記事項なし.不随意運動なし,光過敏性なし.PARTⅡ 実症例から学ぶてんかん診断と治療48その? 主訴:四肢を硬くして意識を失って倒れ,時に失禁する.17 歳(当院初診時) 女性右利き診断症例1失神とてんかん発作との鑑別は①意識消失時の筋緊張の状態は注意が必要である.一般的には,失神による転倒時には全身の筋が弛緩し,てんかん発作による転倒では四肢体幹筋が緊張し,けいれんすると考えられる傾向があるが,けいれんを伴う失神(けいれん性失神),筋緊張を伴わずに転倒するてんかん発作も存在する.②尿失禁は,失神,てんかん発作のどちらでも生じることがある.③てんかんの診断には脳波検査は不可欠であるが,1 回のルーチン脳波検査でてんかん性放電が確認できるのはてんかん症例の約3分の1程度である.したがって,脳波でてんかん性異常が捕捉できないことを根拠にてんかんを否定することは困難である.④初発発作から4年後の当院紹介時に2 剤併用療法であった.単剤で発作抑制が不十分であったため2剤目が導入されたと推測される.てんかんの鑑別診断,抗てんかん薬の有効性,抗てんかん薬投与での症状悪化の有無について検討が必要である.