ブックタイトル症例から学ぶ 戦略的てんかん診断・治療

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症例から学ぶ 戦略的てんかん診断・治療

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概要

症例から学ぶ 戦略的てんかん診断・治療

ここでは,てんかん専門医以外の医師を想定し,成人てんかんに対する現実的な投薬の方法を以下の順で提示したい.提示するのは,A.無投薬例への投薬の開始,B.第一選択薬が無効であった場合の第二選択薬,C.難治例への投薬,D.特異な状況における薬物療法(妊娠・出産,高齢者,精神症状の存在下),E.減薬・減量・投薬中止の仕方,F.いつ,どのタイミングで専門医へ紹介するか,の6 項目である.詳細を参照されたい方は拙著1)を参照されたい.なお,代表的な薬剤の投与方法については,カルバマゼピンがA-1)-a)に,バルプロ酸がA-1)-b)に,ラモトリギン,レベチラセタムがD-1)-a),ガバペンチンがD-2)-b)にそれぞれ示してある.A.無投薬例への投薬の開始てんかん専門医以外の医師が成人てんかんに対して薬物療法を開始しようとする場合,2 つの大きく異なったアプローチの仕方が実際には取られてきた.1 つは多くのてんかん専門医が採用してきた方法の簡易版であって,まずはてんかんを少なくとも部分てんかんと全般てんかんの2つに分け,それぞれに対して第一選択薬となる薬剤を投薬するという伝統的な方法である.この場合,部分てんかんに対してはカルバマゼピンが,全般てんかんに対してはバルプロ酸が第一選択薬であり,特に日本においては健康保険制度上,新規薬剤の単剤投与ができないという特異な事情を加味するなら,無投薬例に対する非専門医の治療法としては引き続きカルバマゼピンかバルプロ酸の二者択一方式と考えてよい.もう1つは,全般てんかんか部分てんかんかを問わず,まずは,重篤な副作用がより少ないブロードスペクトラムの薬剤を投薬するという方法である.この方法も実際には以前から脳外科などを中心に広範に行われてきた.具体的には成人においてはバルプロ酸やゾニサミドなどが選択薬となると思われるが,健康保険制度上の制約を無視した場合,レベチラセタム,少量のトピラマートなども選択肢の1 つとなろう.この方法での薬剤選択は,薬剤がブロードスペクトラムであること,薬疹など重篤な副作用の発生頻度が相対的に少ないことの2 点に基づいて行われる(図Ⅰ-3-1).1) 部分てんかんか全般てんかんかに分ける方法この方法の利点は,最初から有効な薬剤を投与できる確率が上昇するという点である2,3).少なくとも半数以上の症例で,この方法で劇的な発作の抑制が達成できる.成人3.治療① 薬物療法233 治療① 薬物療法