ブックタイトル症例から学ぶ 戦略的てんかん診断・治療
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症例から学ぶ 戦略的てんかん診断・治療
現病歴10歳のとき,朝に突然大きな叫び声が聞こえたので家族が部屋に行くと,全身をけいれんさせていた.救急車を呼んだが,到着前に意識が回復し,本人は何があったのかわからなかった.救急病院を受診して頭部CT 検査を受けたが異常なく,様子を見るようにいわれた.およそ1週間後の午前中,小学校の授業中に全身けいれん発作を起こし,保健室で休ませていると学校から家族に連絡があった.近医を受診し,脳波検査にて全般性不規則棘徐波複合spike and slow wave complex を指摘され,特発性全般てんかんと診断された.バルプロ酸の投与を受け,発作は翌日から抑制された.11歳の時,発熱して学校を休み,風邪薬を飲んだためバルプロ酸を服用しなかったところ,翌朝寝起きに全身けいれん発作が再発した.再び規則的に服用するようになってからは発作は生じていない.年1回,脳波検査を受けているがてんかん性異常波は出現していない.18歳になった時,自家用車の運転免許を取りたいと地域の運転免許センターに行き,相談窓口で上記の経過を説明した.窓口担当者は相談業務フローチャート(図Ⅱ-32-1)に従い,公安委員会指定診断書(てんかん関連)を渡し,主治医に書いてもらうよう伝えた.本例は発作が5年以上抑制されているため,主治医は規則的な服薬を継続すれば今後も発作の再発はないと考え,運転適性があるとの判断を指定診断書に記載した(図Ⅱ-32-2).患者は,すでに運転免許センターでの窓口で相談をすませていたため,免許新規申請書の裏面の病状申告欄①には運転適性相談を終了している欄にチェックした(図Ⅱ-32-3).本例は教習所などで技能試験と学科試験に合格していれば,視覚検査や聴覚検査などの適性試験のみで免許を所得できることになると思われる.最終的な免許交付判断は各都道府県の公安委員会が行う.PARTⅡ 実症例から学ぶてんかん診断と治療228その? 主訴:5 年以上発作が抑制されている.18 歳男性種々の問題症例32てんかん発作と自動車運転との関係は①2013 年6 月の国会で改正道路交通法が可決・成立し,病状申告書の虚偽記載への罰則として「1年以下の懲役又は30万円以下の罰金」が新設された(改正道路交通法第117 条の4 第2項).これに伴って,従来の病状申告書(図Ⅱ-32-3および32-4)は廃止される予定であり,2014年の改正道交法施行に向けて新たな質問票あるいは報告書が検討されている.その他,「交通事故を起こす危険性が高いと認められる患者が免許を受けていることを知った医師は,診断結果を公安委員会に届け出ることができる」,「病気を理由に免許取消後3年以内であれば適性検査のみで免許を与え,再取得までの期間も免許が継続していたとみなす」,などの条項が追加された.なお,てんかんのある人に運転適性があると判断する運用基準(表Ⅱ-32-1)には変更はない.