ブックタイトルあなたのギモンを解決する!つまずき症例から学ぶ関節リウマチ診療

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概要

あなたのギモンを解決する!つまずき症例から学ぶ関節リウマチ診療

第2 章関節リウマチの鑑別診断・治療戦略32 33主 訴RA の継続治療既往歴特記すべきことなしアレルギー歴なし家族歴特記すべきことなし生活歴喫煙:60 歳まで,飲酒:機会飲酒職 業無職現病歴2007 年春頃,多発関節痛が出現.A 医院を受診し,リウマチ性多発筋痛症と診断されプレドニゾロン(PSL)の投与を受け軽快したが,PSL の減量とともに関節痛が増悪した.同年7 月にB 医院を受診したところ,RA と診断され,メトトレキサート(MTX)4mg/週+ PSL4mg/日で治療開始となった.同年9 月に胸痛が出現,精査の結果,リウマチ性胸膜炎と診断され,C 病院に入院した.PSL 30mg/日の投与により軽快した.経過中,微熱,体重減少および皮疹(上肢の?痒性紅斑)を認めた.2008 年10 月に当科主催の市民公開講座に参加し,当科への転院を希望し,同月外来紹介受診.受診時の治療はMTX 6mg/週+ PSL 8mg/日であり,関節痛の訴えは認めなかった.検査所見検尿:尿タンパク陰性,尿潜血陰性.血算:RBC 387 × 104/μL,Hb 12.3g/dL,Ht35.9%,WBC 4,000/μL,Neu 81%,Lym 12%,Mono 5.2%,Eos 1.0%,Baso 0.2%,Plt 22.4 ×104/μL.血清免疫学:CRP 0.11mg/dL,ESR 1 時間値55mm,C3 95mg/dL,C4 27mg/dL,CH50 57U/mL,IgG 1,218mg/dL,IgA 384mg/dL,IgM 29mg/dL,IgM-RF 陰性,ANA 1,280 倍(homogenous),MMP-3 346ng/mL, 抗CCP 抗体 陰性,抗DNA 抗体 陰性,抗U1-RNP 抗体 陰性,抗Sm 抗体 陰性,抗Scl-70 抗体 陰性,抗Jo-1 抗体 陰性.  手の単純X 線写真では,骨びらんや関節裂隙狭小化を認めなかった(図2-1).皮疹・胸膜炎・タンパク尿を1 伴う多発関節炎,何を考える?症例:64 歳男性患者背景 転院時の検査所見においてIgM-RF および抗CCP 抗体がともに陰性であり,ANA が高値陽性であったため,RA 以外の鑑別を行うこととした.しかしながら,関節症状以外の臨床症状に乏しく,特異抗体もすべて陰性であったため,RA の疑い例として継続加療を行った.関節炎の活動性は安定していたため,徐々にPSL を減量し,2010 年7 月に中止,以後MTX 単独投与とした.2011 年10 月に,突然尿タンパク,尿潜血が陽性化したため,腎臓内科に転科とし,腎生検を施行した.その結果,ループス腎炎(Ⅲ,Ⅴ型,ISN/RPS分類)と判明した(図2-2).これにより,RA ではなく全身性エリテマトーデス(SLE)と診断し,ステロイドを増量して継続治療となった.30 20 10 6CRP(mg/dL)MMP-3(×10-2ng/mL)10月 4 月 10月 4 月 10月 4 月765432104 月10月4月10 月4 月10 月2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年尿タンパク,腎生検中止6MTX(mg/週)8 68 7 6 5 3 2 1PSL(mg/日)4経 過最終診断全身性エリテマトーデス図2-1 手の単純X線写真(2008年10月2日)図 2-2 腎生検組織所見 a PAS 染色 400 倍 b 免疫蛍光染色(IgG) c 電子顕微鏡所見a 管内細胞増多を認める.Ⅲ型(巣状ループス腎炎)の所見. b メサンギウム領域および係蹄壁にIgG の顆粒状沈着を認める.Ⅴ型(膜性ループス腎炎)の所見.c 上皮下( )および基底膜内( )に高電子密度沈着物を認める.(→口絵)