ブックタイトルケースに学ぶ 高齢者糖尿病の診かた

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概要

ケースに学ぶ 高齢者糖尿病の診かた

126  Ⅲ.ここに注意! 加齢・老年化に伴う諸問題症のため糖尿病が悪化した時期もあったが,最終的にHbA1c は7.0~7.5%でコントロールすることができた.このあいだに食欲亢進は抑制され,間食も減っていた.血糖コントロールの改善とともに,インスリングラルギンを漸減させ,中止することができた. 図23 - 2に示した約2年間の経過で,MMSE は21点から19点の変化にとどまり,認知機能はほぼ維持されていた. 糖尿病と認知症が合併すると,糖尿病治療に難渋することが多い.本症例の病態と経過を以下のポイントから考察したい.1 血糖コントロール目標値(HbA1c 値)をどう考えるか 2016 年,日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会から「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c 値)」が提案された(巻頭図1 参照).多様な高齢糖尿病患者を認知機能とADL から3 群に分類する.本症例は,軽度認知症を合併しており,手段的ADLの低下が認められるため,カテゴリーⅡに分類される.また,重症低血糖が危惧される薬剤〔インスリン製剤,スルホニル尿素(SU)薬,グリニド薬など〕の使用の有無により,それぞれ目標(HbA1c 値)が設定されている.本症例の初診時はインスリンとSU 薬が使われており,繰り返す低血糖の病歴もあり,低血糖への慎重な配慮が必要であったことから,HbA1c 目標値は8.0 %未満(下限7.0%)となる.診断,病態の読み方塩酸ドネペジルBOT109876強化インスリン療法MMSE 21 21 19GLP-1受容体作動薬 追加グリメピリド 3 mgメトホルミン 750 mgインスリン グラルギン      12単位メトホルミン 750 mgインスリン グラルギン12単位+ インスリン アスパルト 4単位(毎食前)リラグルチド0.9 mgメトホルミン 750 mgインスリン グラルギン 12単位シタグリプチン 50 mg インスリン グラルギン漸減 → 中止6月5月4月3月2月X+3年1月12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月X+2年1月12月11月10月下旬10月上旬9月8月7月6月5月4月3月2月X+1年1月X年12月HbA1c〔%〕間食が止まらないアパシーが進行初診皮膚感染症で入院図23 - 2 本症例における臨床経過