ブックタイトルケースに学ぶ 高齢者糖尿病の診かた

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概要

ケースに学ぶ 高齢者糖尿病の診かた

50  Ⅱ.見逃せない! 知っておきたい急性期反応とその対応いる8). 高齢糖尿病患者にとって,劣悪な口腔衛生状態,歯周病の進行,呼吸器機能の低下,感染に対する抵抗力の低下,ADL の低下の予防は非常に重要な課題である.そのためには口腔ケアが必須と考えられる.また,近年では,経口摂取が困難となり,栄養状態保持を目的として胃瘻造設などの対応をせざるをえない高齢者が急激に増えているが,口から食べ物を摂取するという行動が制限されると,活力が低下する症例が多い.口腔への刺激が低下することで機能そのものが低下し,全身の代謝も低下するという悪循環が生じるうえに,食べる楽しみがなくなってしまうという精神的なダメージも関与していると思われる.口腔内の衛生状態を良好に維持するために,口の中を注意深くケアすることは,肺炎予防のみでなく,身体的,精神的にも良好な影響を及ぼすと考えられる. 本症例は,緊急入院時は禁食とし,広域抗菌薬の点滴静注にて対応した.入院後3日目には解熱を認め,比較的すみやかに全身状態は改善した. 入院時,口腔内汚染が強かったため,まずはスポンジで舌や歯肉を拭い,口腔内に貯留した唾液を吸入した.義歯は取り外して洗浄した.う蝕については歯科口腔外科の医師に対応を依頼した. 座位保持は可能で,自力での経口摂取も可能であったため,初回にゼリー食を導入して摂食・嚥下の状態を確認した.咽頭反射,嚥下機能は比較的保持されており,水分摂取時にむせるのみであった.そのため,水分摂取時にはとろみ剤を使用して急激な流入を防止した.ゼリー食によるむせこみは認めなかったが,家庭での用意は困難なため,自宅ではミキサーを使用し,ゼリー食と同様の形態を用意できるようなブレンダー食へ徐々に変更した.以後も明らかな誤嚥は生じなかった.また,口腔ケアについては患者本人および妻にブラッシングの指導をするとともに,退院後のデイケアや訪問看護でも継続して口腔内観察を行ってもらうよう合同カンファレンスを施行し,情報共有を行った.歯科口腔外科には,抜歯や義歯調整の必要性から,退院後も引き続き通院する予定となった. さらに,早期離床に努めることにより,日中はほぼ車椅子移乗の状態で過ごすようになった.トイレまでの歩行も介助により可能となり,ADL は入院前の状態まで改善した.経過─治療とケア─本症例のPoint全身状態の把握と適切な血糖コントロールを含む治療が大切である.肺炎予防のために口腔内の清潔保持,歯周病予防に努める口腔ケアの習慣づけが重要であり,歯科医師との連携が必要となる場合がある.嚥下機能や生活環境に応じた食形態の導入を検討する.家族を含め,デイケアや訪問看護などサポート体制の強化と情報共有が必要である.