ブックタイトルケースに学ぶ 高齢者糖尿病の診かた

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概要

ケースに学ぶ 高齢者糖尿病の診かた

2  Ⅰ.総 論1 知っておきたい高齢者糖尿病のABC1 高齢者糖尿病とは 高齢者糖尿病とは,65歳以上の糖尿病患者に該当する.高齢者糖尿病は個人差が大きく,その要因としては,年齢,合併症や併存疾患の有無およびその重症度だけでなく,身体機能,認知機能,心理状態,社会・経済状況などがある. 高齢者糖尿病が65 歳未満の成人の糖尿病と異なる特徴を示すのは,とくに75 歳以上の後期高齢者の糖尿病においてである.老年症候群である日常生活活動度 activities of dailyliving(ADL)低下,サルコペニア,フレイル,認知機能障害・認知症,腎機能低下,重症低血糖,脳卒中,心不全は,75 歳以上または80 歳以上で起こりやすい.したがって,後期高齢者および機能低下がある一部の前期高齢者が,高齢者糖尿病としてとくに注意すべき治療の対象となる.高齢者糖尿病の特徴を表1 - 1に示す.2 糖尿病と老化 糖尿病は加齢とともに増加し,65歳以上の高齢者の15~20%は糖尿病である1() 図1-1).加齢とともに糖尿病が増加するメカニズムは,加齢に伴うインスリン分泌能の低下とインスリン抵抗性の増大である.インスリン分泌能の低下には,加齢に伴う膵β細胞におけるミトコンドリア機能の低下,テロメア長の短縮,酸化ストレスの亢進などが関与する.一方,インスリン抵抗性の増大には,内臓脂肪の増加,筋肉量の低下,活動量の低下が関係する. 糖尿病患者では老化が促進されているという考え方がある.糖尿病になると,若いころから動脈硬化性疾患をきたしやすく,腎機能低下,感染症,老年症候群もきたしやすい.糖尿病合併症の成因としては,終末糖化産物 advanced glycation end product(AGE)の蓄積,酸化ストレスの亢進,炎症,インスリン抵抗性,ミトコンドリア機能異常,テロメア長の短縮が考えられており,これらは老化の原因と共通している(図1 - 2).したがって,高齢者糖尿病では,認知症,動脈硬化性疾患,サルコペニア,フレイルなどの老化と関係する合併症または病態が起こりやすくなる.A 高齢者糖尿病の特徴表1 - 1 高齢者糖尿病の特徴● 食後高血糖をきたしやすい● 低血糖を起こしやすく,低血糖に対する脆弱性が大きい● 無症候性を含めた動脈硬化性疾患を合併しやすい● 腎機能や肝機能が低下し,薬剤の蓄積や代謝の遅延が起こりやすく,薬剤の有害作用をきたしやすい● 認知機能障害,うつ病,ADL 低下,サルコペニア,フレイル,転倒,低栄養などの老年症候群をきたしやすい