ブックタイトルトラベル&グローバルメディスン

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概要

トラベル&グローバルメディスン

106感染対策 渡航医学,ことに日本のトラベルクリニックでのリスク・コミュニケーションや帰国者・訪日者で関心事となるのは熱帯感染症の印象があるだろうが,先進国も含む,温帯・冷帯・乾燥帯気候など,ほぼどの地域にも健康被害の原因となり得る感染症は多数存在する(表5?A?1).すべてを取り上げることは困難であるため,執筆時点で判りうる範囲内で,特に注目すべき渡航関連の感染症を本章で取り扱い,それ以外にも勘案に値する感染症の例を巻末資料②に示した.診断法・治療法,各疾患の詳細,媒介生物の生態などは専門書に譲る. また,節足動物媒介感染のうち,蚊媒介感染症は最も重要でありワクチンの有無,マラリア予防薬の有無にかかわらず個人的防蚊対策は必須で,経口感染症も頻度が高いため本項で触れる. さらに,マラリアは渡航医学・熱帯感染症,国際保健や公衆衛生などの領域において重要な感染症である.2007 年にアフリカ連合がAfrica Malaria Elimination Campaign を立ち上げ,WHO もミレニアム開発目標Millennium Development Goals(MDGs)で同感染症を対象として挙げたことや,マラリア世界技術戦略Global Technical Strategy for Malaria(GTSM)がマラリア患者数などの削減目標を掲げたことなどからもわかる.さらに,適切な診A5 渡航医学で重要な感染症1759 年は忘れもしない恐ろしい年だった.神は我々の社会から凄まじい勢いで人っ子一人とも残さず人々の命を,奪っていった.幸いにして神の祝福を受けた僅かな人数だけがその麻疹からの死を免れることができた.エフレイン・ハリス(開拓者・農夫)表5?A?1 感染経路と主な感染症の例経口感染A 型肝炎,E 型肝炎,腸チフス・パラチフス,コレラ,腸管毒素原性大腸菌感染症,ボツリヌス症,トキソプラズマ症*,ブルセラ症,赤痢,ロタウイルス,ノロウイルス,アニサキス,ジアルジア症,蟯虫,ギニア虫など飛沫・飛沫核感染インフルエンザ,ハンタウイルス,肺炎球菌感染症,百日咳,ジフテリア,結核,コクシジオイデス症,ヒストプラズマ症など節足動物媒介感染発疹チフス,マラリア,ライム病,バベシア症,ペスト,デング,チクングニア,ジカウイルス感染症,日本脳炎,ダニ媒介性脳炎,SFTS,リフトバレー熱,ウエストナイル熱,ロア糸状虫症,リーシュマニア,オンコセルカ症,各トリパノソーマなど血液・体液・性行為感染梅毒,軟性下疳,HIV/AIDS,B 型肝炎,C 型肝炎,ヒトパピローマウイルス感染症など経皮感染・創部感染・接触感染破傷風,トラコーマ,住血吸虫症,皮膚爬行症,スナノミ症,ヒトパピローマウイルスなど経路不明ブルーリ潰瘍*巻末資料⑰参照