ブックタイトルトラベル&グローバルメディスン

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概要

トラベル&グローバルメディスン

2渡航者は感染症媒介者になりうる トラベルメディスン(渡航医学)は人類が移動しはじめた時から語られる.ペスト,麻疹,コレラといった伝染病の世界的拡大が人類の移動・交易などと大きく関連していることは他項でも触れられている.そこから検疫や熱帯医学などが研究されるようになった. 人類移動の経路を調べるにはミトコンドリアDNA などを用いた解析が有名だ.マラリアに焦点を合わせて人類の生活の変化などと照らし合わせると,別の次元でも人類の移動がトレースできる.本来類人猿でのサイクルのみだったマラリア原虫がヒトを介するサイクルを獲得したところから人類とマラリアの戦いは始まり,媒介蚊の変遷やG6PD 欠損症,鎌状赤血球症,α?サラセミアなどにも人類とマラリアとの競い合いの証と思われる形跡がある.ヒトは農耕を始め,4,000 年のうちに人口が530 万人から8,650 万人に激増したといわれる(図1?A?1)1~3).農耕はマラリア媒介蚊に適した環境を与え,また,マラリア原虫も媒介蚊を乗り換え,蚊も環A1 トラベルメディスンとは―「どこへ行くか」から「何をするか」―道に志し,我に依り,仁に依り,藝に游ぶ(人格者たらんと志を持ち,道徳に従い,仁の心に従い,技芸を楽しむべし.)孔子10 万年前4 ~ 6 万年前1.5 ~ 3 万年前1 ~ 4 千年前西暦1441 年以降マラリアの起源とされている地域図1?A?1 人類の移動と遺伝子解析による P. falciparum 原虫の起源太平洋の孤島には類人猿は自力では行けないと考えると,農耕民族がマラリアを持ち込んだと推測できる.旧大陸における色の濃さは,遺伝子解析によるP. falciparum 原虫の起源からの地理的距離と遺伝子多様性の相関性を示す.新大陸への進出は奴隷貿易以降であろうと考えられている.(文献1,2)より作成)