ブックタイトルメタボリックドミノに挑む　俺流処方　糖尿病・腎・内分泌疾患編

概要

メタボリックドミノに挑む　俺流処方　糖尿病・腎・内分泌疾患編

6．食後高血糖はどれほど危険か？ 47A 食後血糖値は，どれくらいになれば食後高血糖といえるのか？心血管疾患発症のリスク因子としての食後高血糖の程度　現在では，多くの疫学研究の結果，経口ブドウ糖負荷試験（OGTT）における負荷後血糖値は心血管疾患発症のリスク因子として認識されている．これらは，欧州にて非糖尿病男性17,285人を最大20年間追跡したWhitehall Study，Paris Prospective Study，Helsinki PolicemenStudy の3 つのコホ―ト研究を合わせた検討，Honolulu Heart Program，FunagataStudy，DECODE（Diabetes Epidemiology：Collaborative Analysis of Diagnostic Criteria inEurope）研究，DECODA（Diabetes Epidemiology：Collaborative Analysis of Diagnostic Criteriain Asia）研究などに代表されるものである．一方，2 型糖尿病患者における実際の食後の血糖値については，食事の内容やタイミングなどさまざまな影響を受け，また，その定義も明確でないこともあり，食後高血糖と心血管疾患との関係を研究した臨床研究はほとんどない．日本糖尿病学会（JDS），米国糖尿病学会（ADA），国際糖尿病連合（IDF）の各ガイドライン間においても一定の見解が得られていないが，食後血糖値の治療管理目標の設定を困難にさせている理由として，糖尿病患者において食後血糖管理とそのアウトカムを検討したエビデンスが少ないこと，現在までOGTTにおける負荷後血糖値により評価を行ってきたことなどがあげられる．　DIS（Diabetes Intervension Study）は，新たに2 型糖尿病患者と診断された1,139 人を11年間にわたり追跡し，虚血性心疾患と総死亡に対するリスク因子を検討した前向き研究である．また，同試験では食後血糖値を通常の朝食摂取から1 時間と規定している．その結果，空腹時血糖値ではなく食後血糖値が180mg/dL以上であることが，心筋梗塞の発症，死亡率と有意に関連したことが示された．　一方，2007 年にIDFが発表した「食後血糖値の管理に関するガイドライン」のなかで，1,5-AG（1,5-anhydroglucitol）が食後血糖を管理する新しい指標として紹介されている．1,5-AGは，高血糖に伴う尿糖排泄により腎臓での再吸収が阻害され血中濃度が低下するため，食後高血糖などの血糖変動を鋭敏に反映すると考えられている．とくにHbA1c値が比較的良好な7～7.5％以下の患者においては，HbA1cの変化ではとらえられない食後高血糖などの血糖日内変動を反映して1,5-AG 値が大きく変化する．吹田市の住民健診を対象とした都市型コホート研究の吹田研究において，冠動脈疾患や脳卒中の既往歴のない住民を対象に平均11.1 年間追跡調査した結果，1,5-AG 値と全心血管イベントの発症リスクに関連があることが報告された．男性では，非糖尿病を対象とした解析でも，1,5-AG値が健常レベル（24.5μg/mL以上）の群に比較して1,5-AG の基準値14μg/mL以下（食後平均最高血糖森 豊6 食後高血糖はどれほど危険か？俺流処方［糖尿病・肥満］