ブックタイトルメタボリックドミノに挑む 俺流処方 糖尿病・腎・内分泌疾患編

ページ
6/14

このページは メタボリックドミノに挑む 俺流処方 糖尿病・腎・内分泌疾患編 の電子ブックに掲載されている6ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

メタボリックドミノに挑む 俺流処方 糖尿病・腎・内分泌疾患編

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

メタボリックドミノに挑む 俺流処方 糖尿病・腎・内分泌疾患編

46 糖尿病・肥満メタボリックサージェリーは糖尿病治療法となるのか? メタボリックサージェリーという言葉を聞いたこともないという人は,かなりの数にのぼるであろう.もともとは1970年代からいわれている言葉であるが,近年,糖尿病治療のオプションとして注目され始めている. メタボリックサージェリーの定義は,「代謝性障害を治療することを意図して行う外科治療」とされている.欧米では1960 年代から病的肥満に対して外科治療が行われてきた.近年は腹腔鏡下手術の発達もあり,世界中で年間34 万件以上行われている.その肥満外科治療において,ある種の手術をすると,重症の糖尿病患者が術後数日で糖尿病の治療を必要としなくなることが多く認められたため,手術が糖尿病の治療法となりうるのでは,と考え,研究が行われてきた. 近年では,糖尿病に対する内科治療と外科治療の無作為化比較試験や20 年を超えるコホート研究の結果も出ており,手術による治療と内科治療の併用は内科治療単独よりも効果が高いことが証明されている. 2009 年には,米国糖尿病学会American Diabetes Association(ADA)が治療目標にremission(寛解)ということを打ち出した.これは薬を使わずに1 年以上HbA1c が6.0%以下(完全寛解complete remission)または6.5%以下(部分寛解partial remission)となることとされており,外科治療を念頭においた目標である. ただ,すべての糖尿病に対して手術が有効というわけではなく,肥満を伴った比較的若年者の糖尿病に有効であるということがわかってきている.術式によって寛解率も異なり,消化管のバイパスを伴った術式の方が,効果が高いことも知られている. 手術によって糖尿病が寛解する機序は,まだ完全には明らかにされていないが,単に体重減少だけではなく内因性のグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)などの消化管ホルモンの分泌変化や胆汁酸の関与など,さまざまなことがわかってきている. 日本肥満症治療学会は,「日本における高度肥満症に対する安全で卓越した外科治療のためのガイドライン(2013 年版)」で,糖尿病などの代謝性疾患を伴う肥満に対してはBMI32 以上を手術適応とする(BMI35 以下は臨床研究としての適応)としている.また国際糖尿病連盟International Diabetes Federation(IDF)は,2011年に,アジア人においてはBMI 27.5以上の内科的治療ではコントロールが難しい2 型糖尿病は外科治療を治療オプションとして考慮すべきであるというステートメントを出している. メタボリックサージェリーによって,すべての糖尿病を治療することはできないし,術前後にも糖尿病専門医の協力は不可欠ではあるが,肥満を伴った比較的若年者のコントロール不良な2 型糖尿病に対しては,手術を治療オプションとして考えるべき時代がすぐそこまできていることは間違いないであろう.(笠間和典)文献1) Rubino F,Shukla A,Pomp A,Moreira M,Ahn SM,Dakin G:Bariatric,metabolic,and diabetessurgery:what's in a name? Ann Surg,259:117-122,2014.2) Mingrone G,Panunzi S,De Gaetano A,Guidone C,Iaconelli A,Leccesi L,Nanni G,Pomp A,Castagneto M,Ghirlanda G,Rubino F:Bariatric surgery versus conventional medical therapyfor type 2 diabetes.N Engl J Med,366:1577-1585,2012.3) Dixon JB,Zimmet P,Alberti KG,Rubino F;International Diabetes Federation Taskforce onEpidemiology and Prevention:Bariatric surgery:an IDF statement for obese Type 2 diabetes.Diabet Med,28:628-642,2011.Advanced Column