ブックタイトルここに気をつける!誘発電位ナビ

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概要

ここに気をつける!誘発電位ナビ

41第3 章.聴性脳幹反応 Jewett らは1970 年にネコ1),1971 年にヒト2)から,音刺激後およそ10 ms 以内に,5?7 個の陽性頂点を有するごく短潜時の聴覚誘発電位を記録し,この反応が脳幹聴覚路に由来することを明らかにしました.彼らは,末梢の聴神経あるいは脳幹の神経活動を頭皮上に置いた電極より聴性脳幹反応auditory brainstemresponse(ABR)が記録できますので,この反応が遠隔電場電位far-fieldpotential であることを初めて提唱しました.ABR は,今日では日常の臨床検査法の一つとして定着しています.この反応は個体間の変動が少ない上に,麻酔や睡眠の影響をほとんど受けず,さらに無侵襲かつ簡単に脳深部の電気活動を捉えるためです. 矩形波(100 μs の幅)パルス電流をスピーカーで音信号に変換すると,立ち上がりが急峻なカチャッというクリック音click が得られます(図Ⅱ-3-1A).しかし,音響学的には音の周波数スペクトル分布(0.5?8 KHz)が広く,周波数特異性が低下します.ピップ音tone pip や短音tone bursts はクリック音に比べて立ち上がりは急峻ではありませんが(図Ⅱ-3-1A),周波数特異性はあがります.検査音の立ち上がりが速ければ速いほど,内耳の蝸牛神経細胞群のインパルス放電の同期が良好となるため,神経学的検査としてABR を使う場合にはクリック音が好んで用いられます.しかし,記録されるABR の周波数特異性は減少しますので,標準純音聴力検査とABR の生理学的意義は同じではありません.ABR の発生に関与するクリック周波数成分は2?8 KHz と考えられています.1 なぜクリック音刺激?3)3 聴性脳幹反応