ブックタイトルエキスパートが本音で明かす 不整脈診療の極意

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概要

エキスパートが本音で明かす 不整脈診療の極意

8Ⅰ.不整脈診断の心得はじめに? 心電図は,100年以上の歴史をもつ最も基本的な循環器診断ツールであるが,その所見の解釈については,現在もなお新たな知見が発見され,進歩し続けている.その一方で,ST-T に現れる所見は,その変化が多様であることに加えて,各所見のパターンと疾患とが1:1 に対応しないことなどにより,その解釈は心電図の読解を最も難しいものとしている.実際,ST-T の解釈についてまとめて論じたものも少ない.? 本章では,心電図の ST-T 所見の解釈について「ST-T 解釈の極意」と題し,「本音で明かす」の趣旨のもと,筆者なりの解釈を述べてみたい.A sharp ST-T angle? 図1-1は,労作性狭心症症例に対して行った運動負荷心電図所見である.運動負荷後にⅡ,Ⅲ,aVF,V4 からV6 に明瞭な下行傾斜型ST 下降を認め,負荷試験陽性であることが明らかであるが,負荷前の心電図の段階で,虚血性心疾患の存在を感知できないかが臨床上は重要である.? 負荷前の心電図を見ると,Ⅱ,Ⅲ,aVF,V4から V6の ST-T の所見が正常のそれとは異なることがわかる.正常のST-T は,QRS の終了直後よりなだらかな上昇とともにT 波に移行し,T 波のピークに至ったのちは急峻に基線に戻るという,T 波が左右非対称の形を呈している.これに対し,図1 - 1 の負荷試験前の所見はST が延長し,T 波は減高,T 波の幅は小さく,T 波が左右対称の形となっている.この所見は,前述の特徴を有するとともに,ST とT 波の角度が急峻であることから,一般的にはsharp ST-T angle といわれている所見であり,虚血性心疾患を示唆すると考えられている.? sharp ST-T angle に明確な診断基準はないが,筆者は,前述の特徴に加え,ST の長さがT 波の幅に等しいか,より長いことを判断基準としている.この基準によると,当院で半年間に記録されたおよそ15, 000件の心電図のうち,90件(0. 6%)にsharp ST-T angle が見つかり,そのうち7 割近くに心異常が見つかった.心異常の69%は虚血性心疾患であり,20%が拡張型心筋症などの左心機能低下,11%が心肥大,弁膜症,その他であった.B ST-T所見の分類? sharp ST-T angle を含め,ST-T の形状パターンを,T 波が陽性か陰性か,T 波が左右対ST-T解釈の極意不整脈や失神の病態評価に役立てる! 1W