ブックタイトル小児の訪問診療も始めるための31のポイント

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概要

小児の訪問診療も始めるための31のポイント

8医療的ケアを必要とする子どもが在宅生活に移行するまでの道筋にはいくつかのパターンがあります.小児がんの末期や中途障害の場合はどの診療科の方でも比較的イメージしやすいと考えられますが,本項では一般的にはイメージしづらいNICU から退院する子どもが,どのような経過や状態で「おうち」に帰るのか,2 つのケースを子どもの視線でナラティブにご紹介します.2A 重症仮死出生のいーくんのメッセージ「おかあ! 苦しいよ~.助けてよ~」胎児心拍モニタの基線が上下に大きく揺れはじめた.基線細変動が乏しくなっていた.突然,高度変動一過性徐脈(severe variable deceleration)となり,徐脈が遷延し,戻らなくなった.白亜のお城の一室のような最新設備のLDR(陣痛分娩回復室)の空気が一変した.薄いオレンジ色の優しいレースのカーテンの窓には,薄紫の紫陽花が夕焼けに映えて,オレンジ色に燃えはじめた.それまで“ しっかりいきんで” と励まされていた母親に,助産師が“ 楽にして!いきまないで! ” と叫んでいる.産科医が帝王切開の準備を始めた.不規則な痛みに意識が遠のきながら,母親は胎動を感じなくなった子宮の中の子が自分の一部ではなくなっていく不安を感じながら,ただ,祈った.僕の名前は,いーくん.4 歳.おかあと,おとうと,ばあばと,弟のきーくんと,5 人で暮らしている.あとね,うちには僕のおかげで,毎日素敵な友達が来てくれるよ.だいたい決まった日の同じ時間に会うので,来ない日があると,とっても心配になるんだ.おかあによると,看護師さんとヘルパーさんとPT さんらしく,お仕事で来てくれてるんだって.でも僕にとっては,優しいT さんと,お世話焼きR さん,K さんと,メリハリNICUから退院してくる子どもと家族の物語