ブックタイトル在宅復帰支援

ページ
7/12

このページは 在宅復帰支援 の電子ブックに掲載されている7ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

在宅復帰支援

能性を改めて探ることは困難である.早期に,つまり,退院先を迷っている段階で,「自宅で行うことができる支援に関する情報提供」をしっかり行い,「自宅での療養生活を患者が具体的にイメージできる」ように対話することが,MSWの重要な役割になる.また,疾患が悪性腫瘍や進行性のものと,そうでない場合とでは,時間的経過や病態変化,生活上の制約などについての見通しに違いがあるため,その点を考慮しなければならない.非がんの要介護者の介護は一般的に長期間に及ぶ可能性が高く,家族の介護負担も慢性化することが予測される.そのため,長い目でみた介護体制,経済的見通しをもった支援を検討する必要がある.?在宅ケア選択に至る2つのパターン― 積極的選択と消極的選択―在宅ケアを選択するケースには,大きく二群ある.1 つは積極的に在宅ケアを望む群,もう1 つは在宅ケア以外の選択肢がない群である.前者は,本人の意思や家族の意向が明確な場合である.「家に帰りたい」「家でみてあげたい」と意思表示される場合には,医療者側も,その希望を叶えようと,あらゆる困難を解決する方向で検討するため好循環が生まれる.一方で,在宅ケアが客観的には困難と判断されるものの,経済的理由で施設が利用できない,あるいは本人が施設ケアに受け入れられない状態である場合には,「在宅ケアをするしかない」という,消去法による在宅ケアにならざるを得ない.在宅チームにとっても,積極的選択,消極的選択,いずれの選択で在宅ケアが開始されるかで,実務的・心理的負担感が異なる.いわゆる「処遇困難」といわれるケースには,消去法によるものが多くみられる.?在宅ケア開始に至る経過がその後の経過をも左右する消去法による在宅ケアでは,ケアを行う人的・経済的条件が乏しく,家族関係の複雑さ,生活環境の劣悪さ,介護抵抗や意思決定の困難さなどが絡み合う多問題ケースが少なくない.さらに在宅では,病院に比して少ない専門職でかかわらざるを得ないことも多く,支援にあたっての条件がより厳しくなる.在宅では,認知症や精神疾患を背景としたサービス拒否,支援者に対する暴言,暴力やハラスメントを伴い関係性の構築が難しいケース,重症・重介護により施設ケアが叶わず,家族介護に依存せざるを得ないケースなどにしばしば遭遇する.このような例では,閉ざされた環境の中に個々の専門職が単独で訪958 在宅医療連携における病院医療ソーシャルワーカーの役割③