ブックタイトル在宅医療をはじめよう!医療を変える、地域を変える、文化を変える

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概要

在宅医療をはじめよう!医療を変える、地域を変える、文化を変える

10楽なように,やりたいように,後悔しないようにって?患者さんと信頼関係を築く方法よ 南先生の診療所に末期がんの女性の訪問診療をしてほしいと依頼があったようですね.患者さんはまだ若く,未成年の子どもさんもいる.そして,何より病気の進行が早かったのか,ご家族も今の状況を受け入れられていない.そんな状況下での退院…….これが当院の新規患者であったとしても,職員全員が気を引き締めて,腹を据えて引き受けるような症例です. 患者さんは自分の病気のことや予後を知っているのか,よく理解しているのか.キーパーソンである夫も,どの程度理解し,覚悟ができているのか.そして,子どもたちは?非がんの高齢者の終末期にもご家族それぞれのケアが必要ですが,若い末期がんの方とそのご家族のケアとなると,さらに踏み込み,しかしそのことで患者さんやご家族を傷つけないという細心の注意を払いながらのサポートが必要になります.経験上,患者さんやご家族との厳しいやりとりも想像できますから,引き受けるときには,それ相当の覚悟が必要になるのです. そのような患者さん,ご家族に対して,今後,最大限のサポートをするためにも,最初にやっておくべきことがあります.それは,患者さん・ご家族と信頼関係を築くことです.信頼関係なんて,時間をかけて築くもの,そんなに短時間に築けるわけがないと思われるかもしれませんが,私は「信頼関係は1度で築ける」と思っています.その秘訣が,この「楽なように,やりたいように,後悔しないように」なのです(表1 -1,図1 -1).楽なように病気そのものや老化を治すことはできなくても,痛みやしんどさは自宅でも十分に取ることができます.とにかく患者さんを楽にしてあげること.「痛みがあるときは,主治医に文句をいってもらって構いません」と伝え,患者さんが痛みをがまんしていないかどうかにも配慮してくださいやりたいようにつらいことが緩和されれば,次はやりたいことができるように支援します.やりたいことは,1 人ひとり違います.患者さんの思いや望みを聞き,その思いや望みを叶えるお手伝いをしましょう後悔しないように一生懸命介護をしても,大切な人が亡くなった後は,「あのとき,ああしていれば」と後悔の気持ちがでてくるものです.だからこそ,大事な局面では,考えられるすべての選択肢を提示し,ご本人とご家族にとって何が最善なのかを考えましょう.「これでよかったのだろうか」とご家族が悩んだときに,「あれだけ悩んでみんなで出した答えなんですから,よかったんですよ」といって,肩の荷を下ろしてあげられるように(医療法人ゆうの森 クレド「ココロのめざすところへ。」より)表1-1 楽なように やりたいように 後悔しないように