ブックタイトル多職種で取り組む食支援

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概要

多職種で取り組む食支援

33Ⅱ.あなたの患者が困っていたら,誰に相談する?移行できることを数多く経験してきたからだ.その土台があるうえで食べる機能を引き出すため,五感に働きかける手技を用いてスクリーニング評価を行い,安全に食べ始める,そして食べ続けるためのサポートをし,食べさせる技術を駆使している. 食べさせる技術とは,ただ口もとにスプーンを運ぶことだけではない.より患者の機能を引き出すためにはどういった介助が必要か,スプーン操作や見せ方など,その方に合った方法で介助ができることである.その介助方法を見出し,介助するスタッフがその技術をできるようになるまで指導し,かつ主導することで「食べる」をサポートし続けていけるよう取り組んでいる.こんなふうに連携します! 同じ病棟内の患者の相談は,勤務の際に声をかけてもらい対応しているが,他病棟の患者の相談にはタイムリーに受けられないことも多い.そのため,摂食訓練のオーダーを受け,主導されているリハビリテーション科の医師や,訓練を請け負っているSTとの情報交換を密に行い,ともに具体策を提案するようにしている. 連携するにあたっては,KTバランスチャート(p.16)を思い描き,多職種から得た情報を統合して,その方を包括的に捉えるようにしている.たとえば,看護師は全身状態や呼吸状態,口腔状態に関する情報は豊富だが,食具操作や活動性,耐久性の部分はリハビリテーションに依存する傾向がある.また,食物形態や栄養状態については栄養士の得意分野だが,全身状態の経過を追うことは難しいと聞く.KTバランスチャートを用いて症例を考えていくと同時に,そういった情報量に差のある多職種間で,1人の患者の情報を共有し,イメージするのに役立てている.そうしたうえで,どういった方向性を見出すか,誰に何をお願いするのが効果的かをアセスメントし,弱い部分だけに焦点を当てるのではなく,強みを見出し,そこを強化していくことで食べる力を回復,維持,強化できるよう連携を行っている.私を呼ぶときの掛け声患者さんの口腔ケア,どうやったらきれいになるか,また,食べることにつながるかを一緒に考えてもらってもいいですか?めとま 当院では嚥下障害が重度であっても,患者本人やご家族から「食べたい」,「食べさせたい」との希望があれば,経口摂取を継続するよう取り組みを始めている.機能が低下し食事としての摂取が難しい場合でも,その方の喜びや楽しみにつなげる食の支援もとても大切である.どのようなステージにあっても,きれいな口で食を楽しむことは人として守らなくてはならない尊厳の1つといっても過言ではない.一人ひとりの食を取り巻く意向や環境,そしてその方の機能に見合った「食べる」を支援していきたいと考えている.(甲斐明美)