ブックタイトルTHE 整形内科

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概要

THE 整形内科

375 新しい概念「筋膜性疼痛症候群」はじめに 第一線の現場で,患者の疼痛治療のために苦慮している医師の方々は,患者の痛い場所に,すがる気持ちで試しに局所麻酔薬を注射したら,想像以上に治療効果が出て,患者と一緒に驚いた経験があるかもしれない.このような現象は日本中で起きているが,学会や学術領域で話題になることはまれである.また,ある高名な麻酔科医は,硬膜外ブロックで生理食塩水を注射して十分な治療効果を実感するも,周囲に話すことへの羞恥心のために発表することはなかった.しかし,実は局所麻酔薬よりも生理食塩水のほうが有効である趣旨の論文は,古くは1980年のLancetにも掲載されている1). 従来の西洋医学では,腰痛の原因の約80%が原因不明とされている.一方で筋膜性疼痛症候群(myofascial pain syndrome:MPS)が,プライマリ・ケアの現場でもペインセンターでも疼痛の原因の1位であるという報告も多々ある2). 科学の基本は現場・現象の解析であり,既存の知識体系で現場を整理することではない.現場で起きていることが事実であり,既存の医学体系で理解できなければ,理解できるように考えを改める必要がある.これまでの西洋医学の歴史では,筋などの軟部組織注1によるさまざまな症状を軽視してきた.そのため,X線・CT・MRIなどの画像診断で構造異常がみられない場合は,多くの臨床医は痛みの原因を“心のせい”としてきた.そして,大半の患者は「命にかかわる病気でないなら……」と諦めていた.しかし,原因不明の症状が筋などの軟部組織にあると患者が気づくだけで,安心から症状が軽快することもある.安心感による全身の脱力も関係するだろう.さらに,その部位に注射をして症状が軽快すれば,患者はより納得する(治療的診断).A 筋膜性疼痛症候群(MPS)とは? トリガーポイント(trigger point:TrP)=筋硬結という理解はすでに過去のものである.最近では,「トリガーポイント(TrP)=過敏化した侵害受容器(例:さまざまな刺激に反応す注1 軟部組織:アメリカ国立癌研究所(National Cancer Institute:NCI)の軟部組織の定義は,「皮膚,脂肪組織,筋膜,腱,靱帯などの骨組織を除く結合組織と,血管,筋線維(横紋筋・平滑筋),末梢神経組織(神経節と神経線維の総称である」とされている.新しい概念「筋膜性疼痛症候群(MPS)」─ 筋肉は痛くない!? キーワードは膜! すごワザ生食注射によるエコーガイド下筋膜リリース!!─ 5