ブックタイトルかかりつけ医・非専門医のためのレビー小体型認知症診療

ページ
8/12

このページは かかりつけ医・非専門医のためのレビー小体型認知症診療 の電子ブックに掲載されている8ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

かかりつけ医・非専門医のためのレビー小体型認知症診療

82病歴と診察 受診の4 ヵ月前,夜中に無断外出し,徘徊していたらしく,警察に連れられて朝方帰宅した.同じ頃から重ね着がしばしばみられ,「お遍路さんが来ている」「東京に住んでいる息子がさっき来た」「誰かがいる」と訴えるようになった.調子がよいと発話もスムーズであるが,悪いときにはぼーっとしているなど,状態に変動が目立つ.動作は遅いが振戦はない.睡眠中に寝言がひどい.半年前に原因不明の一過性意識消失発作があった.診察では,表情に乏しく(仮面様顔貌),発語は単調で,四肢に軽度筋強剛を認める.動作緩慢で歩行の際に腕振りが乏しい.診断を考える 変動する認知機能障害(認知症)に幻視,パーキンソン症状がみられ,中核症状が揃った典型的なレビー小体型認知症と判断することができる.さらにレム睡眠行動障害(RBD)を推測させる,寝言が頻繁であり,一過性意識消失発作の既往もレビー小体型認知症を支持する所見である.病歴からレビー小体型認知症をまず考える.外観を含めた診察で,仮面様顔貌や動作緩慢が観察される点も,レビー小体型認知症として矛盾しない(あえて神経学的診察をしなくてもよい).改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R) HDS-R総得点は16点(20 /21 点が認知症/非認知症の境界)であった.本事例では,数字の逆唱や単語の列挙(1分間で野菜名を列挙する課題)が0点であった.3 単語の遅延再生課題では1 個は自発的回答が可能,1 個はヒントで正答,1 個はヒントを与えても想起することができなかった.事例 2典型的な病像を示すレビー小体型認知症の72 歳,男性