ブックタイトルかかりつけ医・非専門医のためのレビー小体型認知症診療

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概要

かかりつけ医・非専門医のためのレビー小体型認知症診療

122病歴と問診・診察 80 歳頃から糖尿病の指摘を受け,インスリン療法が施行されているが,経口摂取量が不安定で,しばしば低血糖発作を生じている.88歳頃から「見知らぬ人間や蛇がみえる」などの幻視を訴え始めた.睡眠中に大声を出して室内を歩き回る.「誰かが家のなかにいる」と終日独り言を続けている.要介護4 に認定され,週3回デイサービスを利用しているが,利用施設では幻視の訴えはない.易怒性が強く,おむつ交換やデイサービス利用を拒否するようになったことから,家族が相談受診した.車椅子で入室,仮面様顔貌で,四肢に中等度筋強剛を認める.問診では,質問に対して保続が目立つ.年齢は正答可能であったが,生年月日や診察日の月日,場所などを答えることは全くできなかった.診断を考える 認知症に幻視,パーキンソン症状がみられることから,臨床診断はレビー小体型認知症でよい.本事例では臨床診断の正否よりも家族が困っている行動障害・精神症状への対策が緊急の課題である.治療を考える 認知機能障害の進展抑制を主目的に,抗認知症薬としてのアリセプトR をまず使用するか,あるいは行動障害・精神症状の軽減を目指して向精神薬や漢方薬などを第一選択薬にするか,判断に苦慮する事例である.実臨床では,幻覚や妄想,うつといった精神症状が,アルツハイマー型認知症以上に活発なレビー小体型認知症に遭遇する機会が多い.もの忘れ(記憶障害)よりも行動障害・精神症状が前景となるレビー小体型認知症では,初診時に使用する薬剤の選択に困ることも少なくない.認知症ゆえに,まず認知機能障害の進展抑制が必須との視点から,抗認知症薬を第一選択薬とし,その後に向精神薬などを加える考事例 20行動障害・精神症状の軽減に苦慮した90 歳,男性