ブックタイトルぼくらのアルコール診療

ページ
7/12

このページは ぼくらのアルコール診療 の電子ブックに掲載されている7ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

ぼくらのアルコール診療

144参考文献1) McDaniel SH, Cambell TL, Hepworth J,他(著),松下 明(監訳): 共同して働く:家族志向のメンタルヘルス専門家との連携・紹介.家族志向のプライマリ・ケア,丸善出版, 東京, 405-421,2006.2) Arroll B, Khin N, Kerse N: Screening for depression in primary carewith two verbally asked questions:cross sectional study.BMJ,327(7424):1144-1146,2003.3) 樋口 進, 齋藤利和:飲酒量低減:アルコール依存症の治療ゴール.日本アルコール・薬物医学会雑誌,48(1):17-31,2013.(吉本 尚)私のアルコール失敗談 私は,飲酒後に顔の赤くなるフラッシャー(少量の飲酒で顔面紅潮,動悸,頭痛などが出現する人)だが,それにもめげず若い頃はよく飲んだ.とくに20代後半から30代前半には,当時の久里浜病院内に気の合う同僚が多くおり,よくつるんで飲み歩いた.午前0 時をまわることもしばしばであった.飲んでいると,次の日のことはどうでもよくなる.翌日がアルコール外来でもだ.このような日は,翌朝をひどく酒臭い状態で迎える.外来に行くと年配の看護師長がいて,気を遣ってマスクをくれる.役に立たないことはわかっているのだが…….断酒している患者には,バツが悪いといったらない.患者に,自分のほうから,飲みすぎを告白することになる.しかし,患者からたしなめられたことは一度もない.半分笑いながら,「先生も気をつけて」くらいで終わってくれた.ここで,底をつかなかったせいか,同じような失敗を何度も繰り返した.私の同僚のなかには,酔って転んで骨折した足を引きずりながら,また別の者は道路のロープにつまずいて顔半分に傷をつくりながら,外来診療をしていた者もいる.これに限らず,若いときの酒にまつわる失敗談はたくさんある.しかし,私も同僚も,今はそのようなこともなく,淡々と仕事をしている.歳と酒にまつわる経験が,自制と分別を分け与えてくれたのだろう.(樋口 進)