ブックタイトル認知症でお困りですか?かかりつけ医の疑問にお答えします
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認知症でお困りですか?かかりつけ医の疑問にお答えします
178著者からのメッセージ病名や病態を知るのは患者さんの権利である.したがって,正しい病名や病態について,患者さん自身にもわかるように説明することが原則である.患者さん本人に疾患名を正確に伝えることが治療上大きなマイナスになると判断されれば,家族に相談のうえ,本人への病名告知はすぐにはしないという選択肢もあり得る.いまだに根治的治療のない認知症疾患の場合,病気の説明や対応指導,心理的援助は最も重要な治療手段である.紋切型に疾患名を告知して薬物治療を行い,患者さんや家族に対する心理的な援助を怠るような粗悪な診療は厳に慎むべきである.東北大学大学院医学系研究科高次機能障害学分野 准教授 松田 実患者さんの病名を告知したほうがよいのか否かで迷っています.告知の基準やその方法などについて教えてください 「告知」という上意下達的な印象を与える述語が認知症医療にふさわしいとは思えないので,このあと著者は「説明指導」という言葉を主に使うこととする.「説明指導」のなかには当然ながら,疾患名の説明も含まれることになる. 多くの認知症は根本的な治療法のない進行性の神経難病である.薬物療法の選択肢は少し増えたというものの,いずれも対症療法の域を出ない薬剤であり,病気の進行を完全にとめることはできない.患者さんと家族は「治らない病気」とつきあいながら,今後の生活を組み立てていかなければならない.したがって,認知症診療の眼目は薬物療法の導入などではなく,患者さんと家族が生活や生命の質(QOL)をできるだけ保つことができるように援助することである.そこでは病気に対する説明や生活指導が最も重要になる.認知症診療において「説明指導」は不可欠な治療行為なのである. 患者さんや家族のQOLを低下させないためには,患者さんと家族の感情的な安定が何よりも大切である.医師の説明を聞いて,患者さんや家族の気持ちが落ち込んだり,絶望的な気分に陥ったりするのならば,治療的には明らかにマイナスであろう.患者さんも家族も今後の療養にできるだけ前向きになれるような「説明指導」を心がけるべきである. もちろん,嘘をつく必要はないし,嘘をついてはいけない.正直に病名も病態もお話したあとに,どのような心構えで認知症という「治らない病気」と向かい合えばよいのかについて懇切丁寧に指導し,それで患者さんや家族も前向きになっていただけることが理想的である.しかし,患者本人や家族の年齢,性格,患者さんと家族との関係性,社会的立場などによって,病名と病態の説明のニュアンスが多少異基本的な考え方