ブックタイトル「はたらく」を支える!女性のメンタルヘルス

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概要

「はたらく」を支える!女性のメンタルヘルス

ルプロ酸では口唇口蓋裂,心血管奇形,二分脊椎などの催奇形性のリスクがあり,またIQ への影響もあるという.血中濃度に依存して奇形発現率が上がるため高用量(1,000mg/day 以上)の使用は避けるべきである.カルバマゼピンも一般的な催奇形性に加え,二分脊椎のリスクがいわれている.ラモトリギンは奇形発現率が少ないといわれている.リチウム,バルプロ酸は妊娠の最初の3 ヵ月に服用した場合には催奇形性の明確なリスクがあり,その点では他のラモトリギンや抗精神病薬も安全性は確立していない.授乳に関しては,抗精神病薬は非定型抗精神病薬の安全性に関するデータが少ないが,クエチアピンやリスペリドンよりもオランザピンは母乳移行が少ない 7).リチウムはかなりの量が母乳移行し,乳児の血中濃度は母体の1/2~1/3 に達する.またラモトリギンは母体が内服した量の10%以上が母乳移行したことから,リチウムとラモトリギンは授乳という点では推奨されない.バルプロ酸やカルバマゼピンは比較的母乳移行率が低いとされている.妊娠関連以外の各薬剤の使用上注意すべきことがいくつかある.非定型抗精神病薬では,長期的に内服する場合の脂質代謝系や体重増加などの副作用のリスクとベネフィットを十分に考慮する必要がある.体重増加の可能性が最も高いのはオランザピン,中等度がリスペリドンとクエチアピン,最も低いのがアリピプラゾールであるが,そのアリピプラゾールであってもプラセボと比較すると体重増加は有意に多い.また,抗精神病薬を処方する場合には高プロラクチン血症とそれによる月経への影響や,特に閉経前後の女性,高齢者には骨粗しょう症への配慮も必要である.リチウムは治療有効域が狭く,適切なモニタリングによるリチウム中毒を予防する必要がある.腎や甲状腺への副作用も知られている.バルプロ酸は体重増加,急性膵炎,高アンモニア血症性脳症に加え,NICE ガイドラインでは多嚢胞性卵巣症候群の懸念と計画外妊娠のリスクから18 歳未満の女性患者に対するバルプロ酸の使用の回避が勧められている 8).カルバマゼピンは低ナトリウム血症および皮膚粘膜症候群と関連している.また計画的な妊娠の方法として経口避妊薬があるが,カルバマゼピンでは肝P450 酵素誘導によってその避妊効果を減弱させてしまう可能性があるので注意が必要である.ラモトリギンは皮膚粘膜症候群との関連がある.210第6 章 女性と精神神経疾患