ブックタイトル原子力災害の公衆衛生
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原子力災害の公衆衛生
3A1 東京電力福島第一原子力発電所事故放射線事故と原子力災害 高度と地磁気緯度によって多少は異なるが,航空機のなかでは,地上の数十倍以上の放射線被ばくを受ける.病院では診断や治療により放射線被ばくをすることがあるが,仮に副作用が現れるとしても,管理されている範囲での被ばくであれば事故とはいわない.放射線被ばく事故とは,意思とは関係がない不慮の被ばくであり,結果として影響が現れるか,その可能性がある場合をいう.原子力災害は,原子力施設や装置により起きた放射線事故ということである.ちなみに,悪意により被ばくさせることは事故ではなく犯罪である.被ばく事故の特徴は,身体的影響のほかに,精神的な不安を引き起こすことや,社会 自然界には放射線および放射性物質が存在する.宇宙から放射線が飛んでくるし,土壌,岩石,空気中にも放射性物質は存在し,われわれは日常ごくわずかではあるが放射線を浴びている.太陽からの光を浴びているが,太陽光線の紫外線や赤外線も,そして放射線(γ線やX 線)も電磁波の一種であり,波長の長さにより,電波(携帯電話などから発生している電磁波),赤外線,可視光線(人間の目に見える光),紫外線,そして電離放射線と分けることができる.放射線には,色も香りもなければ味もなく,被ばくしてもそれ自体がわからないことが多い.つまり放射線事故現場にいても何が起きているのかまったくわからない.治療が必要な線量の被ばくを受けても,症状が出るまでに時間を要するため,すぐには被ばくしたことがわからない.放射線とその影響に関する説明も,医療関係者にとってさえも決して理解しやすいものではなく,単位にしても,counts per minutes(cpm),Becquerel(ベクレル,Bq),Gray(グレイ,Gy),Sievert(シーベルト,Sv),さらにSv で表される線量にも実効線量,等価線量,預託実効線量がある. 2011 年3 月11 日午後2 時46 分に発生した東北地方太平洋沖地震とそれによる津波は,東京電力福島第一原子力発電所(以下,福島第一原発)を襲った.そして大量の放射性物質を環境中に放出し,これまで経験したことのない大規模かつ長期にわたる原発事故を発生させた.この事故は地震,津波そして放射性物質の放出を起こした原発事故との複合災害であり,事故発生から2 年を過ぎた今でも,対応は続いている.本項では,今回の事故で何が起こったのか,放射線の影響はどう評価したのか,また公衆衛生従事者に必要な放射線と放射線被ばくの基礎知識にも触れる.