ブックタイトル戸田新細菌学 改訂34版
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戸田新細菌学 改訂34版
?ウイルスによる発癌539ⅣA.ウイルスと癌 癌cancer は,正常な調節機構から外れた細胞の異常な増殖によって引き起こされる病気である(細胞の異常な増殖によってできた塊を腫瘍tumor と呼び,そのうち悪性のものが癌である).細胞のDNA の特定の場所に突然変異が生じることが癌の原因であるが,その分子機構の解明に癌ウイルスoncogenic viruses(腫瘍ウイルスtumorviruses)の研究が中心的な役割を果たした. ウイルスが癌を起こすことは,最初に1908年にトリ白血病で,次いで1911年にトリ肉腫で明らかにされた.これらは,現在レトロウイルスと呼ばれるウイルスが原因となる癌である.また,1930年代になってDNA ウイルスであるパピローマウイルスがウサギに乳頭腫(良性腫瘍)や癌を起こすことが示された.その後,さまざまな動物の腫瘍で種々のウイルスが発見された.ヒトでも,ヘルペスウイルス科に属するEB ウイルス(エプスタイン・バーウイルスEpstein?Barr virus)とバーキットリンパ腫Burkitt lymphoma の関係が明らかにされた(p. 589)のに続き,その後いくつかの癌でウイルスの関与が示された.表Ⅳ?6?1 に,ヒトおよびヒト以外の動物で腫瘍の原因となる主なウイルスを示す.発癌につながる突然変異は,遺伝的要因およびウイルス,発癌性物質,放射線などの環境要因によって引き起こされる.したがって,ヒトのすべての癌がウイルスによって起こるわけではないが,肝癌や子宮頸癌のほとんどはウイルスが原因である.6ウイルスによる発癌表Ⅳ?6?1.腫瘍の原因となる主なウイルスウイルス科腫瘍の種類レトロウイルス科白血病*(HTLV?1),リンパ腫,癌腫,肉腫小型DNA ウイルス パピローマウイルス科乳頭腫*(HPV),癌腫*(HPV) ポリオーマウイルス科さまざまな腫瘍 アデノウイルス科さまざまな腫瘍ヘルペスウイルス科リンパ腫*(EBV),癌腫*(EBV),肉腫*(HHV?8)フラビウイルス科肝癌*(HCV)ヘパドナウイルス科肝癌*(HBV)ポックスウイルス科粘液腫,線維腫*は,ヒトの腫瘍でウイルスが原因となるものを表す.*がついていないものは,ヒト以外の動物で見られる腫瘍を表す.( )内にヒトの腫瘍の原因となるウイルスを示す.HTLV?1:Human T?lymphotropic virus 1,HPV:human papillomavirus,EBV:Epstein?Barr virus,HHV?8:human herpesvirus 8,HCV:hepatitisC virus,HBV:hepatitis B virus