ブックタイトル戸田新細菌学 改訂34版
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戸田新細菌学 改訂34版
368 細菌学各論?いるが,このプラスミド上にこれらの病原遺伝子は存在しない.そのほかの遺伝子の相同性は非常に高く,染色体上の約94%の遺伝子は共通である.また,バシラス属の3 菌種とも複製開始領域の近傍にrRNA,tRNA およびリボソームタンパク質遺伝子が集中して存在する.これは芽胞を形成する細菌に共通に見られる特徴で,クロストリジウム属の菌でも認められる.発芽の際に都合がよいと考えられる.【抵抗性】 芽胞は何十年にもわたって土中に生きながらえることができる.pH 6 以下,気候の劇的な変化,雨量の増加時に発芽して増殖する一方,長期間の乾燥には芽胞として生残する.汚染地域が出現・広域化すると,家畜,とくに草食動物などへの影響が深刻となる.芽胞は消毒薬,加熱にも抵抗する.芽胞を殺すには,高圧蒸気滅菌による120℃で15 分以上の加熱を必要とする.【病原性】 炭疽菌は主として草食動物(ヤギ,ヒツジ,ウシ,ウマなど)に感染する.肉食動物,雑食動物(イヌ,ネコ,ブタなど)の感染例は少なく,鳥類,爬虫類,魚類の感染はきわめてまれである.実験動物ではマウスが最も感受性が高く,次いでウサギ,モルモット,ラットである. ヒトは炭疽に罹患した家畜との接触や,炭疽菌の芽胞に汚染された家畜の肉・排泄物などから感染する.ヒトからヒトへの伝染はなく,患者の隔離は必要ない.ヒトでは3 つの主な感染経路がある.すなわち,皮膚,呼吸器,消化器を経て感染し,それぞれ皮膚炭疽,肺炭疽(吸入炭疽),腸炭疽を起こす.a)皮膚炭疽 炭疽症例の95%以上は皮膚炭疽anthrax of skinである.汚染されたウールや,毛皮などの取り扱い中に,露出部の手,腕,頭などの創傷から菌または芽胞が侵入して,2~3 日の潜伏期をおいて,かゆみのある皮膚丘疹,次いで水疱となる.その中心部は壊死し,乾燥して黒い痂皮ができ,その周囲には浮腫と皮下出血による赤紫色の水疱を伴う.無痛性であり,悪性膿疱(エスカーeschar)と呼ばれる.化膿菌の二次感染が起こると,化膿,疼痛,発熱,倦怠感,リンパ節腫脹などが出現するが,多くは自然寛解する.顔や首にできた皮膚炭疽の場合には,気道閉塞の危険がある.重症例では,敗血症や髄膜炎を引き起こし死亡する(未治療の致命率は20%).b)肺炭疽 肺炭疽pulmonary anthrax(吸入炭疽)は,獣医師,牧畜業者,毛皮取り扱い者などが芽胞を含む塵埃を吸入して起こる.芽胞は肺胞に達し,肺胞マクロファージに貪食され,気管支粘膜下および縦隔のリンパ節に運ばれ,リンパ節腫脹を起こす.菌はマクロファージの食胞内で栄養型となって増殖し,莢膜をつくり,少なくとも3 種の毒素を産生して細胞を破壊し,栄養型の炭疽菌を周囲に広げる.1~6 日の潜伏期をおいて,発熱,筋肉痛,頭痛,空咳,軽度の胸部不快感などのかぜ様症状で始まり,急速に進行して,高熱,呼吸困難,喘鳴,チアノーゼ,ショック,髄膜炎(50%)を引き起こす.急性呼吸切迫症状が24~36 時間続くと,どのような治療によっても95~100%が死亡する.ワクチンが推奨されて,西ヨーロッパでは職業病としての肺炭疽は激減している.肺に吸入された菌は,速やかに縦隔リンパ節に移動して出血性縦隔炎を起こし,菌は肺にほとんどとどまら表Ⅲ?12?1.炭疽菌B. anthracis,セレウス菌B. cereus および枯草菌B. subtilis のゲノムの比較ゲノムの性質B. anthracis Ames 株B. cereus ATCC 10987 株B. subtilis 168株染色体プラスミド染色体プラスミド染色体pXO 1 pXO 2 pBc 10987サイズ(bp)平均G+C 含量(mol%)遺伝子をコードしている領域(%)遺伝子の数rRNA オペロンの数tRNA 遺伝子の数5,227,29335.484.35,5081195181,67732.577.12170094,8293376.2113005,224,28335.6855,6421298208,36933.580.9242004,214,81043.5874,1001088