ブックタイトル戸田新細菌学 改訂34版

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戸田新細菌学 改訂34版

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戸田新細菌学 改訂34版

788 免疫学総論?A.免疫系1.概 要  本来,免疫系は病原微生物から宿主を防御する生体防御システムhost defense system として存在しており,その進化の歴史は感染症の脅威によってつくられてきたといえる.したがって,免疫系を細菌やウイルスなどの病原微生物の侵入に対する感染防御機構としてとらえることで,複雑に進化したヒトの免疫機構が理解しやすくなる.病原微生物の侵入の際に,戦う免疫系はあらかじめ備わった自然免疫innate immunity と,クローン増殖によって感染数日後からはたらくT 細胞およびB 細胞(いずれもリンパ球)による適応免疫adaptive immunity(または獲得免疫acquiredimmunity)に大きく分類される. 自然免疫では,好中球やマクロファージなどの食細胞が微生物由来の持つ繰り返しパターン,病原体関連分子パターンpathogen?associatedmolecular patterns(PAMPs)をToll 様受容体Tolllike receptor(TLR)に代表されるパターン認識受容体pattern?recognition receptor(PRR)という受容体(レセプター)で認識する.それら自身は持続する免疫にはつながらないが,初期の感染防御と適応免疫を誘導する役割を担う. 生体内に侵入した微生物が,自然免疫のバリアーを突破して数日以上生体内に存在すると,微生物由来の非自己抗原(決定基antigen)が遺伝子再編成で産生したその抗原決定基特異的受容体antigen receptor を備えているT 細胞とB 細胞(抗原特異的クローン)に刺激として伝達され,リンパ球クローンの分裂,増殖と分化の結果,抗体やエフェクターリンパ球の産生が引き起こされる.これを適応免疫(獲得免疫)と呼び,記憶細胞(リンパ球)によって免疫が持続することが特徴である.これらの過程を免疫応答immune response と呼び,生体を守るために有効なだけの量の抗体やエフェクターT 細胞が産生されている状態を「免疫が成立している」といい表す(図Ⅸ?1).免疫応答を引き起こすことを目的として,非自己抗原決定基を持つ異物をなんらかのルートで生体に与えることを,「免疫するimmunize,immunization」という.2.病原体関連分子パターン  自然免疫で認識される微生物の表面の繰り返しパターン(PAMPs)には,グラム陰性菌の細胞壁を構成する糖脂質であるリポ多糖体lipopolysaccharide(LPS),グラム陽性菌の細菌壁成分であるリポタンパク質,リポタイコ酸やペプチドグリカン,結核菌に含まれるトリアシルリポタンパク質,マイコプラズマのジアシルリポタンパク質,グラム陰性,グラム陽性菌の鞭毛成分のフラジェ免疫学 総論図Ⅸ?1.感染防御システムとしての免疫系感染症における生体防御システムを時間経過に従って模式化した.皮膚表面や粘液中の生物学的バリアー皮膚,粘膜の機械的バリアー体液中の非特異的防御因子( 補体,インターフェロン,ラクトフェリンなど)好中球,マクロファージ,NK 細胞の集合抗原提示細胞感作T 細胞の産生サイトカインBT抗体細胞傷害性T 細胞好中球,マクロファージ,補体の協力による免疫反応自然免疫獲得免疫