ブックタイトル器官病理学

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器官病理学

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器官病理学

出血として手術材料で提出される機会も増えてきた.時間的空間的に小出血をくり返し起こすことも多い.動静脈奇形arteriovenous malformation(AVM)◆定義:構造的に異常な動脈と静脈の短絡が生じたものをいう.大小不同の異常血管が集簇したナイダスnidusが形成される(図14-7).◆発生機序:胎生期に大脳の動脈と静脈が短絡を起こすことにより生じるとされる.◆形態:内弾性板が欠落しながらも厚い平滑筋層を有するもの,あるいは明瞭な内弾性板を有するも平滑筋層を欠損するものなど,動脈とも静脈とも確定できない異常血管が集簇する.AVM では組織学的に大小の異常血管の間には正常脳組織が介在するが,この点が海綿状血管腫cavernous hemangiomaとは異なり,診断上有用である.◆臨床的事項:10?20 代の若年者に痙攣発作または頭蓋内出血として発症する場合が多い.頭蓋内出血はクモ膜下出血が多いが,脳内の出血もきたす.出血で発症し,血腫除去手術時に術者によってナイダスが確認され,発見される場合もある.クモ膜下出血/動脈瘤破裂subarachnoid hemorrhage/rupture of aneurysm◆定義:脳血管が破綻しクモ膜下腔に出血した状態をいう(図14-8).◆発生機序:非外傷性クモ膜下出血のおよそ80%は動脈瘤破裂に起因する.中高年では動脈瘤破裂が多く,若年では脳動静脈奇形の破綻が多い.◆形態:脳動脈瘤は肉眼形態により,①嚢状saccular,② 解離性dissecting(以前の木の実状berry),③紡錘状fusiform に分けられる.また成因により,①先天性,② 動脈硬化性,③ 感染性/細菌性,④ 外傷性に分類される.動脈瘤は脳底動脈およびWillis 動脈輪付近に好発し,特に血管の分岐部に生じやすい.中大脳動脈分岐部が約40%,前交通動脈分岐部が約30%である(図14-9).◆臨床的事項:突然の激烈な頭痛で発症する.髄膜刺激症状がみられ,脳圧亢進により意識障害が生じ,死亡する場合もある.遅発性に脳血管攣縮による脳虚血や髄液の灌流障害による水頭症を合併することが多い.脳梗塞脳梗塞cerebral infarction とは脳の血流が血栓,塞栓により遮断されることでその末梢の脳組織が壊死に陥ったものをいう(図14-10).血液が遮断されて乏血性梗塞に陥った部分に血液が再流入すると,再灌流障害により壊死組織が崩壊することで出血が生じるが,これを出血性梗塞hemorrhagic infarctionという.脳組織が虚血に陥り,不可逆性に障害され壊死となる.脳血流が30%以下になるとニューロンの電気活動が停止してミトコンドリアからATP が産生されなくなり,イオンポンプが停止し,細胞膜の脱分極が生じる.シナプスでは過剰にグルタミン酸が放出され,NMDAレセプターを介してニューロンの細胞質内にカルシウムイオンが過剰に流入し,さまざまな蛋白質分解酵素が活性化され,細胞死が起こる.B.循環障害737図14-8 クモ膜下出血a.脳幹部を中心に血腫がみられ,出血は脳全体に広がる,b.脳幹周囲の脳底部にhighdensity area が広がる(CT画像).(写真提供:札幌麻生脳神経外科病院村田純一先生)