ブックタイトル器官病理学
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器官病理学
.胃潰瘍消化性潰瘍peptic ulcer発生機序は種々議論されてきたが,一般的には防御因子(粘液に代表される)と攻撃因子(塩酸,ペプシン,ガストリンなど)のバランスが失われた結果に起因すると考えられてきた.しかし,現在ではHP 感染により,ウレアーゼ活性が高まり,さらにアンモニアによる種々の粘膜障害が,胃潰瘍gastric ulcer の発生原因とされる.これらに防御因子,攻撃因子を調節する神経,血管因子などが複雑に絡み合っている.消化性胃潰瘍の好発年齢は40?50 代で,男女比は2:1 で男性に多い.発生部位は幽門腺と胃底腺の境界部幽門側で,加齢に伴う慢性胃炎の拡大とともに潰瘍の好発部位も胃上部に移っていく.以上のように潰瘍の発生する部は慢性胃炎の及んだ部位で,慢性胃炎の認めない正常の胃底腺粘膜に潰瘍が発生する頻度は極めて低い.消化性潰瘍の多くは単発であるが,多発性潰瘍も約30%にみられる.消化性潰瘍の肉眼像は円形?不正円形が多い.胃の前から後壁にまたがり,その長さが30 mm 以上に及ぶ時は線状潰瘍と呼ばれる.長期の経過をたどった線状潰瘍では,高度の線維化により著明な小弯短縮をきたす.◆肉眼・組織像:消化性潰瘍の肉眼像は胃壁に大小の欠損を示し,慢性期には粘膜ヒダの集中を認める(図6-46).組織学的にはUL-Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅵに分類される.UL-Ⅰは粘膜のみの欠損(びらんerosion)で,UL-Ⅱは粘膜筋板の欠損,UL-Ⅲは固有筋層の一部までの欠損,UL-Ⅳは胃壁全層の欠損である(図6-47,48).◆分類:胃潰瘍は急性期と慢性期に分けられる.急性潰瘍では胃壁の部分的,あるいは全層の欠損と,潰瘍底の表層から深層にかけて壊死層,線維素析出層,細胞浸潤層がみられる(図6-49a).また,粘膜下層には著明な浮腫を伴っている.急性期を過ぎると潰瘍底の粘膜下層422 第6章消化管図6-46 消化性胃潰瘍a.胃体中部小弯に胃壁が深く掘れた慢性の活動性潰瘍である.周囲から粘膜ヒダが潰瘍に向かって集中している.b.胃体部に粘膜ヒダの集中を認める.粘膜は完全に修復された潰瘍瘢痕である.図6-45 胃のGVHDa.骨髄移植後40日.粘膜の腺管は高度に脱落・消失し,間質は浮腫と軽度の線維化を示している.b.拡大で残存した腺管にはアポトーシス小体が多数みられる(?).