ブックタイトル器官病理学
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器官病理学
B 胃の病変.胃の構造と機能胃は解剖学的に食道胃接合部esophagogastric junction(EGJ)すなわち噴門括約筋の下端から幽門括約筋までを指すが,噴門括約筋は肉眼的ならびに組織学的にその認識が困難なため,形態的には嚢状の胃から管状の食道に移行するくびれ(切痕incisura)から十二指腸移行部の幽門輪までを胃と呼んでいる.解剖学的に大弯と小弯を3 等分し,各々を結んで,上から噴門部(上部U:fundus),胃体部(中部M:corpus),胃下部(L:pylorus/antrum)に分けられる.胃の天井は穹窿部(fornix)とも呼ばれる(図6-30).胃壁の組織学的構造:胃内面から粘膜固有層(最深部には粘膜筋板),粘膜下層,固有筋層(内輪状筋と外縦走筋),漿膜下層,漿膜に分けられる(図6-31).内輪状筋と外縦走筋の間にはアウエルバッハ神経叢が豊富に存在している.血管は大弯と小弯から胃壁に入り,各々の一定の領域を支配している.また,リンパ管は主として粘膜筋板の直下から粘膜深部にかけて豊富なネットワークを形成している.粘膜は幽門部では固有胃腺である幽門腺pyloricgland(図6-32a),胃体部は胃底腺fundic gland から構成され,いずれも表層は腺窩上皮で覆われている(図6-32b).幽門腺粘膜は正常では幽門輪からほぼ5?6 cmの範囲にある.一般的に成人の日本人では慢性胃炎により(偽)幽門腺が胃体部まで及んでおり,幽門腺-胃底腺境界は解剖学的な幽門-胃体部の境界には一致しない.幽門腺から胃底腺の移行部では幽門腺と胃底腺が混在しているが(中間帯),その幅は約10 mmである.幽門腺粘膜は陽性粘液を含む腺窩上皮に連続して,固有胃腺として房状になった幽門腺がみられ,MUC 6 陽性粘液を有している.その腺窩上皮と固有胃腺の境界部には腺頚部と呼ばれる細胞増殖帯がある.またガストリン産生細胞,ソマトスタチン産生細胞を主とする内分泌細胞が腺頚部の増殖帯を中心として認められる(図6-33).胃底腺粘膜も複合管状腺で,腺頚部増殖帯から副細胞mucous neck cell,壁細胞,主細胞の順にそれらの密度を増しながら配列している.それらの細胞間にenterochromaffin-like cell(ECL 細胞)とグレリン(ghrelin)分泌細胞を主とする内分泌細胞が存在している(図6-34).正常な胃粘膜はほぼ1 mmの厚さを有し,腺窩上皮と固有胃腺部の比率は幽門腺粘膜部ではほぼ1:1,胃底腺粘膜でほぼ1:3?4 である.以上の腺部と粘膜筋板を含めて固有粘膜層としている.粘膜下層は疎な結合組織が主である.また,固有筋層は平滑筋で,血管,リンパ管が分布するほかは内輪状筋と外縦走筋の間はアウエルバッハ神経叢が走行している.胃壁の最外層は,一部を除いて大部分が漿膜で覆われている.胃噴門部と食道胃接合部:胃噴門部は解剖学的には食道胃接合部(EGJ)から胃側の狭い範囲を指すが,組織学的には幽門腺とほぼ同じ構造を有した噴門腺cardiacgland と壁細胞が混在した噴門腺cardiac gland が混在した領域を指している.その範囲は成人の日本人でEGJ から平均で10?20 mm 程度である.噴門腺粘膜は時に食道下部の扁平上皮下にも胃から連続して散在性に認められる.これは食道噴門腺esophageal cardiacgland と呼ばれ,組織学的には固有胃腺のみからなり,通常,腺窩上皮はほとんど認めない(図6-35).その幅はSCJから約5?10 mm 以下である.このほかこの部には膵腺房に類似した腺組織が巣状に認められることがあり,acinar cell metaplasia と呼ばれB.胃の病変413EGJEDUML※※※小弯大弯図6-30 胃の区分大・小弯を3 等分し,胃上部(U),胃中部(M),胃下部(L)と呼ぶ.E は食道,D は十二指腸,EGJ は食道胃接合部である.粘膜固有層(M)粘膜筋板(MM)固有筋層(MP)内輪状筋外縦走筋漿膜下層(SS)漿膜(SE)粘膜下層(SM)図6-31 胃壁の構造食道と異なり粘膜固有層に接して粘膜筋板が走行している.