ブックタイトル器官病理学
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器官病理学
.小児のMCTD:患児はRaynaud 現象が先行し,発熱,関節炎,皮疹,筋力低下などで発症する.Raynaud症状,強皮症様症状,肺高血圧症は少ない.腎炎が10%以下,Sjogren 症候群が30%に合併する.抗核抗体斑紋型100%,抗U1-RNP 抗体100%,高g グロブリン血症90%,リウマトイド因子80%などがみられる..検査所見白血球数は正常ないしやや低下し,血小板は減少する例がある.CRP は活動期に上昇し,この点がSLE と異なる.補体値は正常のことが多い.抗U1-RNP 抗体は本症の99%以上にみられる(表18-3).抗体陽性者は,Raynaud 現象や手の腫脹が高頻度で,関節炎が強い傾向にあるが,重症腎障害が少なく予後はよい..治療関節痛が,非ステロイド性抗炎症薬nonsteroidal antiinflammatorydrugs(NSAIDs)に反応しない場合,特に発熱,全身u怠感,リンパ節腫脹,あるいは筋炎症状の強い場合は,少量のプレドニゾロン(10?20 mg/日以下)を処方する.奏効しない場合は増量する.Raynaud 症状には,PGI2製剤を用いる.肺高血圧症には,特発性肺高血圧症と同様に静注プロスタサイクリン製剤を用いるが,同時にプレドニゾロン20 mg/日と免疫抑制薬(シクロホスファミド50?100 mg/日など)を処方するのがよい.循環動態の異常には血管拡張薬,利尿薬,カルシウム拮抗薬などで対処する.無菌性髄膜炎には大量ステロイド投与を行う.B 全身性エリテマトーデス.定義全身性エリテマトーデスsystemic lupus erythematosus(SLE)は,1942 年Klemperer により提唱された膠原病の中核疾患である.若い女性に好発し,紅斑,全身u怠感,発熱,多発性関節痛などを呈し,腎,中枢神経,感覚器,肺,肝,膵,消化管,漿膜など多臓器が傷害される慢性疾患で,抗DNA 抗体など種々の細胞構成成分に対する多彩な自己抗体の出現を特徴的とする..疫学男女比は1:10で,20代の女性に好発するが,小児や老年者にもみられる.有病率は人口10 万人当たり33人,推定患者数は5 万人である.家族一親等の発症率が高く,双生児の片方がSLE の場合,他方がSLE となる確率は一卵性で25?50%,二卵性で5%と遺伝素因が示唆される.本症の5 年生存率(5生率)は95%,主な死因は感染症,播種性血管内凝固症候群(DIC),心不全,肺高血圧症である..病理形態病理像はステロイド治療により修飾されているので注意がいるが,皮膚では上皮基底細胞層の液状変化liquefaction(基底細胞が膨化してその細胞質がエオジン好性に染色される変化)がみられる.真皮上層部に浮腫とリンパ球,好中球,組織球の浸潤がみられ,コラーゲン線維にフィブリノイド変性がみられる.同部位に免疫複合体immune complex(IC)が沈着し,表皮基底膜層に帯状に免疫グロブリン(Ig)や補体が沈着している(図18-3).脾は濾胞中心動脈や中心動脈周囲にICの沈着したコラーゲンや細網線維が円周状に厚く取り巻いてタマネギ皮状病変onion skin lesion(図18-4)を呈するが,ここにもIg,補体,フィブリノゲンが沈着しており,免疫応答亢進の結果と考えられる.急性期には,血管壁にフィブリノイド壊死fibrinoidnecrosisと炎症細胞浸潤をみる.IC 沈着が臓器傷害となって現れる典型的臓器が腎であり,病理学的にメサンギウム性,巣状,膜性,びまん性増殖性腎炎など多彩な病変がみられる.腎糸球体の毛細血管内皮下に多量のIC が沈着してwire-loop lesionが形成される(図18-5).IC は糸球体内皮下のみならず上皮下,メサンギウム領域あるいは血管内皮にも沈着して腎不全をきたす.心には心外膜炎がみられ,少量の心嚢水が貯留する.Libman-Sacks 心内膜炎は本症の特徴的病変として知られ(図18-6),病理学的には弁膜基部の疣贅形成と白色血栓があって,周囲にフィブリノイド変性,ヘマトキシリン体hematoxylin body などの変性所見をみる.心筋炎もみられ,筋線維間にフィブリノイド変化があってAschoff 体と紛らわしいことがある.剖検集計では心外膜炎が60%,心内膜炎が50%の例にみられる.血管病変は,古典的なonion skin lesionのほか,中?小型動脈に壊死性血管炎,閉塞性動脈内膜炎,白血900 第18章主要な全身性疾患