ブックタイトル幹細胞研究と再生医療
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幹細胞研究と再生医療
454.ナイーブ型ES/iPS 細胞─無垢なる生命のはじまりから再生医学─4いは何であろうか.まず遺伝子発現をみた場合,たとえばKlf2,Klf4,Rex1(Zfp42)やTbx3 などはマウスES 細胞特異的に発現するが,EpiS 細胞では発現していない.一方,より発生が進んだ際に発現するT(brachyury)やSox17 などの分化マーカーは,EpiS 細胞には発現しているがES 細胞には発現していない.キメラ形成能をみた場合,E-カドヘリンを過剰発現させるなどの何らかの工夫をした場合を除くと,EpiS 細胞にはキメラ形成能はないか,あったとしても弱いとされる6).また,生殖細胞へ寄与し世代を越えるという能力はEpiS 細胞では報告されていない. サルやマーモセットといった霊長類ES 細胞でもすでに述べたようにキメラへの寄与は認められず,bFGF とアクチビン/TGF シグナルで培養される多能性幹細胞は,マウスES 細胞のようにキメラから生殖細胞となり世代を越えていくような多能性幹細胞ではないと推測される(p.46,解説コラム 参照). 後述の2i 培地での培養もあわせ,A. Smith らはは可能であろうか.この疑問に対する答えとして,マウスエピブラスト幹細胞epiblast stem cel(l EpiS細胞)が2007年に報告された4, 5).EpiS 細胞は,着床後のエピブラストからヒトES 細胞と同じ細胞培地で樹立された.EpiS 細胞の多能性維持にはbFGF とアクチビン/TGF シグナルが重要であり,LIF では未分化性は維持できなかった.もちろん,ヒトES 細胞と同様にOct3/4,Nanog,Sox2 という多能性幹細胞の中心転写因子は発現しており,in vitro で三胚葉に分化し,マウスの皮下に移植するとテラトーマを形成するという多能性を実際にもっていた.形態的にもマウスES 細胞とは異なり,ヒトES 細胞に近い平坦なコロニーを形成した.このことから,マウスEpiS 細胞は,ヒトES 細胞を含む霊長類ES 細胞に近い性質をもつ多能性幹細胞とされた(表4 - 2).2.異なる多能性─ナイーブ型多能性幹細胞とプライム型多能性幹細胞─ では,マウスES 細胞とマウスEpiS 細胞の違マウスヒトES 細胞エピブラスト幹細胞ES 細胞胚の起源着床前エピブラスト着床後エピブラスト着床前エピブラストキメラ形成能ありなし不明テラトーマ形成能ありありあり試験管内三胚葉分化能ありありあり配偶子形成可能不可可能?*1多能性遺伝子*2 発現発現発現ナイーブ関連遺伝子の発現*3 ありなし一部あり分化系列遺伝子の発現*4 なしありありX 染色体の状態*5 XaXa XaXi XaXa あるいはXaXiLIF シグナル未分化維持反応なし反応なしFGF シグナル分化未分化維持未分化維持2i 培養可能不可不可コロニー形態ドーム状平坦平坦クローン形成能*6 高い低い低い*1 ヒトにおける生殖細胞の誘導は,遺伝子発現を中心として確認されており,キメラ同様,機能的な配偶子を形成し,次世代を生み出せるのかは不明である.*2 Oct4,Nanog,Sox2など.*3 Klf4,Klf2,Esrrβ,Tbx3,Rex1(Zfp42),Stella など.*4 T(brachyury),Sox17,FGF5など.*5 Xa:活性化X,Xi:不活化X.*6 1細胞からの増殖能(クローナルアッセイ).表4-2 ナイーブ型とプライム型の比較