ブックタイトルプログレッシブ生命科学

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概要

プログレッシブ生命科学

174の結合性はないがタモキシフェンとは結合しうる変異核内受容体とCre の融合タンパク質(Cre-ER)を産生するトランスジェニックマウスで,タモキシフェンによりCre の核移行を制御する試みもなされている.10-3 iPS細胞とリプログラミング1 分化した細胞でも遺伝情報は維持される われわれの身体は,受精卵というたった1 つの細胞から,200 種類ほどの異なる細胞が分化することで形成される.現在においては,再構成された免疫細胞を除いて,それぞれの組織に分化した細胞が同一の遺伝情報をもっているということは常識であるが,1950 年代までは,細胞は分化するときに不要な遺伝情報を切り捨てているという考えが主流であった. 1952 年,R. Briggs とT. J. King はヒョウガエルの卵細胞(未受精卵)から核を取り出し,その卵細胞に発生初期(胞胚期)の細胞核とより発生が進んだ時期の細胞核をそれぞれ移植して比較した.その結果,発生初期の細胞核を移植した卵細胞においては個体(オタマジャクシ)が発生したが,より発生が進んだ時期の細胞核を移植した卵細胞において発生は起こらなかった.このことから,発生が進むあいだに遺伝情報は不可逆的に失われると考えられるようになっていた.決するために,個体が正常に発生したあとに遺伝子の不活性化を誘導する試みや,特定の組織のみで遺伝子を破壊するような試みが行われている.このような遺伝子の破壊をコンディショナルノックアウトとよぶ.ⅴ) Cre - loxP 組換えシステムによる組織特異的ノックアウトマウス Cre はバクテリオファージP1 由来のタンパク質で,loxP 配列を認識して,特異的にDNA の組換えを起こす酵素である.2 つのloxP 配列が1 本のDNA 上に同方向に存在すると,Cre の作用により,そのあいだのDNA 部分の欠失が起こる.このシステムは,有核細胞においても効率よく機能することが明らかになっている.組織特異的プロモーターの制御下にCre を発現するトランスジェニックマウスを用いることにより,特定の組織のみで遺伝子ノックアウトを行うことが可能となる.たとえば,欠失させたい遺伝子のエキソンを2 つのloxP 配列ではさむかたちに改変し,そのままでは遺伝子が機能する状態でマウスを作製する.トランスジェニックマウスとの交配により組織特異的にCre を発現させると,その組織でのみエキソンは除去され,遺伝子の不活性化が生じる.ⅵ)誘導性ノックアウトマウス 薬剤を投与することによりCre を活性化する系を用いて,欠失変異を成体マウスで誘導することも可能になっている.すなわち,エストロゲンと図10 - 6 Gurdon の実験オタマジャクシの分化した腸上皮細胞より核を取り出し,処置した未受精卵に移植することで完全な個体を作出することに成功した.これにより,分化の過程でも細胞内の遺伝情報は維持されており,環境を変化させることによって,未分化な状態に戻りうることが示された.核移植クローンオタマジャクシ腸上皮核オタマジャクシ細胞カエルの未受精卵核の破壊核を取り出す紫外線