ブックタイトルプログレッシブ生命科学

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概要

プログレッシブ生命科学

5.オートファジーと疾患71ストレスにより,普段は低頻度に抑えられているオートファジーが亢進し,多数のオートファゴソームがつくられるようになる. オートファジーの別の重要な役割として,細胞にとって不要あるいは有害な物質の除去がある.この対象は多岐にわたり,幹細胞が分化して細胞内部の構成が変化する際,古いオルガネラなどがオートファジーで除去される場合がある.これが起こらないと正常な分化は生じない.また,細胞成分を少しずつ分解することで新陳代謝を促し,細胞を健全な状態に保っている.この基底レベルのオートファジーが神経細胞で損なわれると細胞死が起こり,アルツハイマー病に似た症状を示す.また,損傷を受けたミトコンドリア,変性疾患の図5 - 1 オートファジーの過程細胞質に隔離膜が現れ,隔離膜が成長して直径が0 . 5 ~ 1 . 0μm のオートファゴソームとなる.隔離膜は閉じた膜の袋を押しつぶしたようなかたちをしており,それが壺状になり,最終的に末端どうしが融合して,二重の膜をもつオートファゴソームを形成する(オートファゴソームは脂質二重層の膜を2 枚もつ).オートファゴソームが形成されるとき,細胞質の分子やオルガネラがその内部に閉じ込められる.この隔離機能により,オートファジーは多岐にわたる役割を担っている.その後,リソソームが融合して,オートファゴソームの内側の膜(内膜)と閉じ込めた内容物が分解される.?壊れたオルガネラ,古くなったタンパク質,病原体など隔離膜オートファゴソームリソソーム加水分解酵素オートリソソーム融合図5 - 2 オートファジーの役割細胞はオートファジーの隔離機能を用いてさまざまな活動を行っており,これらによって生存に必要な恒常性が維持されている.抗原提示非通常型分泌寿命延長発生・分化神経変性疾患 炎症性疾患・免疫疾患がん 筋萎縮症・ミオパチー2型糖尿病 貧血動脈硬化 クローン病感染症 メタボリックシンドローム腎症 そのほか心不全飢餓,低酵素などのストレス時の細胞のサバイバル特定物質の輸送不要物や有害物の隔離・除去細胞成分の分解にオートファジーよる栄養源の確保制御栄養状態,種々のストレス,ホルモンなど