ブックタイトルZEROからの生命科学 改訂4版

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概要

ZEROからの生命科学 改訂4版

3.体液性免疫1678(図8ー6).すなわち,いくつかの種類の形質細胞がそれぞれ別の特異性を持った抗体を産生しているのです.同じB 細胞から由来する形質細胞群は1 つのクローンと考えることができますので,通常の抗体産生では,多クローンの形質細胞から作られた抗体が作られることになります.このような抗体を多クローン(ポリクローナル)抗体といいます. 抗原を実験動物に注射してできた多クローン抗体を,検査や実験などに使うことは,比較的古くより行われてきました.しかし,多クローン抗体では,動物に同じように抗体を作らせても,できる抗体の性質は多少違っていることが常です.したがって,全く同じ抗体を供給することには限界があり,困ることがあります.そこで,抗体産生細胞と分裂増殖能が高い骨髄腫(ミエローマ)細胞を融合して,ただ1 種類の抗体を産生する雑種細胞(ハイブリドーマ)を永久に増やすことができる方法が開発されました(図8ー7).その細胞が作る抗体は1 種類の同じ特異性を持つ抗体しか含まれていないので単クローン(モノクローナル)抗体といいます.この方法はクローンさえ絶やさなければ,永久に同じ抗体が大量に得られる上,抗体分子の特異性が同じなので,非常によく利用されています.4 B 細胞だけでは抗体産生が不十分 B 細胞だけでも,抗体産生をするようになることはありますが,マクロファージ,樹状細胞やヘルパーT 細胞と呼ばれる細胞が抗体の産自分の体(自己)の物質と反応するような抗体を作るB 細胞は,アポトーシスにより除去されていきます.このようにして,自己に対する抗体はできないようになっています. 自己に対する抗体を作るB 細胞が除かれてから,仮にX(非自己)というエピトープが,これと結合できる抗原結合部位を持ったB 細胞に出会って結合したとします.すると,そのB細胞は何度も細胞分裂し,自らの数を増やし,形質細胞に分化します.形質細胞は,X に対する抗原結合部位を持った抗体を盛んに合成して放出し,血液中にも抗体が増えていきます. X に対する抗体を作ることができるB 細胞が分裂して増殖するとき,ほとんどのB 細胞は形質細胞に分化しますが,一部はメモリー細胞として,体内に保存されます.この細胞は次にX と出会ったとき,すぐに分裂,分化して,抗体を産生,放出することができるのです.このために,2 度目にX が入ったときの抗体産生までに要する時間は短く,抗体量も多くなります.このような応答を二次応答と呼んでいます(図8ー5). 二次応答では,異物(病原体)が増殖したり,体に悪影響を及ぼす前に,大量の抗体で対応できるという利点があります.ワクチンは,このメカニズムを利用しているのです.3 単クローン抗体とは 体の中で抗体が作られるときは,たった1 つの異物が入った場合でも,その異物上のいくつかのエピトープに対する抗体が産生されます図8ー5 抗体産生の時間経過10010血清中の抗体濃度(相対的活性)10 10 20 30 40 50 60 時間(日)抗原Aに対する一次応答抗原Aの1 回目の注射抗原Aの2 回目の注射抗原Bの1 回目の注射抗原Aに対する二次応答抗原Bに対する一次応答抗体産生細胞(形質細胞)抗体エピトープAエピトープBエピトープC異物の分子モデル図8ー6  1 つの異物を認識する抗体(多クローン抗体)の産生