ブックタイトルZEROからの生命科学 改訂4版

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概要

ZEROからの生命科学 改訂4版

Chapter 8 生体の防御・免疫系と疾患1662 抗体が作られる仕組み 抗体が抗原を認識して結合するとき,実際には,抗原のすべてを認識しているのではなく,その一部を認識しています.その部分を特に,抗原決定基あるいはエピトープと呼んでいます.抗原がタンパク質やペプチドの場合,それは,アミノ酸10 残基分ぐらいの大きさといわれています. ところで,自然界に存在するエピトープとなり得るものは,様々な形をしているはずです.しかも,自然界にない人工物についても,抗体はできることがあります.これらの多様なものに対して正しく認識し結合できる抗体は,どのように作られるのでしょうか? これについては,様々な学説が提唱されてきましたが,現在では,クローン選択説という,以下に述べるバーネットが1957 年に提唱した考え方が基本的に正しいことがわかっています. 胎生期に,様々な抗体を作ることができるB細胞が,まず準備されます※.B 細胞の細胞表面には,その細胞が作ることのできる抗体と同じ分子がつき出ています.1 つのB 細胞が作ることのできる抗体は1 種類だけです.そして, このようにIgG は2 つの抗原結合部位を持っています.このため,抗体が結合すると,病原体はそれだけでも動きや活動が妨げられます.例えば,ウイルスの場合は細胞に侵入することができなくなります.それだけではなく,抗体のFc フラグメントには,マクロファージに認識されやすい部位があり,そのために抗体に結合された病原体はマクロファージに貪食されやすくなるのです.※:遺伝子の組換えが起こります.これを発見したのが,ノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進博士です.図8ー3 体液性免疫と細胞性免疫MHCクラスⅡCD4抗原受容体(TCR)マクロファージおよび樹状細胞分化リンホカイン(B 細胞・T 細胞の分化を促す)分化分化抗体抗原好中球形質細胞CD4 T 細胞(未熟ヘルパーT 細胞)CD8 T 細胞(未熟キラーT 細胞)ヘルパーT 細胞B 細胞抗原体液性免疫細胞性免疫キラーT 細胞CD8TCRパーフォリンパーフォリンMHCクラスⅠウイルス感染細胞NK 細胞マクロファージ図8ー4 免疫グロブリンG(IgG)の構造H2NH2N NH2NH2抗原結合部位可変部HOOCヒンジ部H 鎖L 鎖FabFcHOOC COOHFc 受容体結合部COOH   はジスルフィド結合を示す