ブックタイトルわかる!身につく!生物・生化学・分子生物学 改訂2版

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概要

わかる!身につく!生物・生化学・分子生物学 改訂2版

21.細胞のがん化 27321伝子もかかわりがあり,これに欠陥が生じるとがん化の確率が上がる〔例:除去修復欠陥の遺伝病である色素性乾皮症(第20 章参照)患者は紫外線による皮膚がん発症の割合が高い〕. 細胞死が起こる場合,自らが能動的に死ぬ場合(自じし死)と受動的に死ぬ場合があり,後者の死に方は壊えし死といわれ(ネクローシスともいう),火傷や溶解性ウイルス感染などによって起こる.これに対し,前者の死に方(例:オタマジャクシのシッポの退縮,体内での不要な免疫細胞の処理やがん細胞の死)はおもに遺伝子に組み込まれたプログラムに従って細胞が死ぬ現象(プログラム細胞死という)で,大部分はアポトーシスといわれる死に方によって起こる.アポトーシスは生理的,病理的なさまざまな要因で起こり,ATPや遺伝子発現を必要とし,細胞体積の減少,ヌクレオソーム単位でのDNA の断片化,細胞の断片化などを特徴とする.アポトーシス進行の細胞内経路には,複数のカスパーゼ(タンパク質分解酵素の一種)の連鎖反応や,ミトコンドリアがもつアポトーシス誘導因子とシトクロムcの漏出がかかわる.解 説 アポトーシス2.発がん物質,発がん要因 がんを起こす外来性の発がん物質(第18 章参照)はDNA に直接作用して損そんしょう傷を与えるものと,遺伝子発現を高めるものの2 種類に分けられる(表21-2,21-3).前者のように働くものを発はつがんイニシエーター,後者のように働くものを発がんプロモーターという場合があり,タール成分などは発がんイニシエーターに分類される.発がんプロモーター自身は細胞をがん化する活性は弱く,がん化に向かうように変異した細胞の増殖にかかわる.発がん要よういん因には化学物質や放射線,紫外線だけでなく,細菌(例:ピロリ菌きん感染による胃がん)やp.274 で述べるウイルスがあり,この意味で,ある種のがんは感染症である. ピロリ菌きん Helicobacter pyloriは動物の胃などに感染するらせん状細菌で,ウォレン J. R. Warrenとマーシャル B. J. Marshallにより発見された.細菌の分泌する酵素や毒素により,胃や腸などの消化器に潰瘍やがんをつくる.疾患ノート◆ピロリ菌と発がん分 類役 割作用機序例発がんイニシエーターがんになる最初の部分で効くDNA を標的として攻撃し,DNA 損傷を起こすタール成分,放射線,ニトロソ化合物発がんプロモーターがん細胞の増殖を促す遺伝子発現を高めるホルボールエステル(TPA など),フェノールなど表21-3 発がん物質は2 つに分けられる表21-2 身の周りにある発がん物質,発がん要因?放射線(γ線,X線)?紫外線(太陽光,殺菌燈,日焼け用ランプ)?毒物,重金属,薬品(ニトロソ化合物,鉛など)?食品,食品添加物,化粧品?し好品(アルコール飲料,タバコ)?環境物質(ダイオキシン,アスベスト)?病原体など(がんウイルス,ピロリ菌,カビのつくる毒素)?物理的要因(高温,摩擦)