ブックタイトルわかる!身につく!生物・生化学・分子生物学 改訂2版

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わかる!身につく!生物・生化学・分子生物学 改訂2版

118 Ⅱ. 生化学編糖代謝にかかわる疾患 糖の消化・吸収にかかわる酵素の欠損が原因の疾患としては,小腸粘膜細胞のラクトース分解酵素(β-ガラクトシダーゼ.ラクターゼともいう)が原因のラクトース不ふたいしょう耐症(牛乳を飲むと下痢の症状が出る)やスクロース分解酵素が原因のショ糖不耐症がある.単糖代謝の酵素異常症には,フルクトース尿症やガラクトース血けっしょう症(原因酵素は複数あるが,水晶体への代謝物沈着により白内障の原因にもなり,ガラクトース尿症を併発しやすい)などいくつかのものが知られている.またグリコーゲン代たいしゃ謝においてグリコーゲンシンターゼの欠陥やグリコーゲン分解酵素の欠損により,肝臓や筋肉に正常や異常のグリコーゲンが蓄積し,肝肥大,血糖異常,筋肉運動障害などの症状を呈する疾患である糖とうげんびょう原病(糖とう原げん蓄ちく積せき症しょうともいう)が多数知られている(例:ポンペ病,マッカードル病).さらに糖鎖の分解過程に働くリソソーム酵素が欠損しているため,グリコサミノグリカン(p.104,表9-1)やその分解中間体が組織に蓄積し,臓器障害,知能障害,運動障害などを起こす多数の糖とうタンパク質しつたいしゃいじょうしょう代謝異常症や酸さんせい性ムコ多たとう糖代たいしゃいじょうしょう謝異常症が知られている(酸性ムコ多糖は現在グリコサミノグリカンという名称だが病名では従来からの旧名が使用されている).これらはいずれもリソソーム病びょうの一種である.学習内容の 再 Check! 以下の文章が正しいか間違っているかを,◯ か×で答えなさい.1. 糖質は一般にカルボキシ基をもつので水に溶けて水素イオンを放出し,甘みがある.2. 糖質は単糖を基本構造とするが,単糖が2 個以上結合した糖を多糖という.3. d -グルコースの3 位の炭素にある水素とヒドロキシ基が入れ替わった物質はグルコースの異性体で,溶液中でd -グルコースと変換しうる.4. スクロースを二価の銅と反応させたら,銅が還元された.5. 粉末状態のグルコースにはα体,β体という区別はない.6. スクロース,ラクトース,マルトースのいずれにも含まれる単糖はフルクトースである.L血液型に関する都市伝説 血けつ液えき型がたに関し,巷ちまたではいろいろと噂うわさされている.わが国や韓国では血液型と性格の間には関連性があると信じている人が多い.しかし,p.116 の解説にあるように,ABO 式血液型(第4 章,p.44 参照)の区別は細胞表面の糖鎖付加酵素の種類の違いであり,両者が関連するとは考えにくい.この説明として,わが国や韓国ではそれぞれの血液型の人が比較的万まん遍べんなく分布することに原因があるように思われる(A 型:B 型:AB 型:O型=4:2:1:3).しかし,極端な血液型分布の国も多く(例:ブラジルの先住民はすべてO型),また,骨髄移植により血液型が変化するという事実があることからも,この噂はほとんど科学的根拠のないものだということがわかる.もう1 つの噂として,「ある血液型の人は特定の感染症に罹かかる確率が低い」というものがある.血液型が細胞表面の糖鎖構造の違いによるものなので,もし糖鎖が病原体と何らかの相互作用があるとするならば,この説はあながち嘘でないのかもしれない.特定の血液型とがんとの罹患率に相関があるのではないかという話を聞くことがあり,事実それに沿った研究例がいくつか報告されているが,これも「細胞間相互作用に糖鎖がかかわる」という事実を考えると,信しん憑ぴょう性せいがあるのかもしれない.余談